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文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫 き 39-5)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫 き 39-5)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫 き 39-5)

作家
京極夏彦
出版社
講談社
発売日
2002-09-05
ISBN
9784062735353
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文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫 き 39-5) / 感想・レビュー

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ヴェルナーの日記

巷を騒がせる連続殺人事件「目潰し魔」。この事件には紡績業で一代の富を築き上げた財閥・織作家の女たちが深く関わっていた―― 一匹の絡新婦(じょろうぐも)の吐き出す糸が、周りの人々を絡め捕っていく物語。絡新婦は日本各地に伝わる妖怪の一種で、普通「女郎蜘蛛」と当てるが、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に倣って『絡新婦』としたのであろう。各地に絡新婦の伝承は残っていて、有名なのは静岡県伊豆市の”浄蓮の滝”の物語である(この地名、よくよく覚えておいてもらいたい。後でニアリとされずはず・・・)。

2018/08/08

nobby

「あなたがー蜘蛛だったのですね」この冒頭一行に1400頁読み切って戻り、気付かされる潔さは見事だ!目潰し魔かたや絞殺魔による連続殺人、はたまた神聖な女学校を舞台にした売春・黒ミサ・呪術の噂、これらを繋ぐのは“蜘蛛”。女郎蜘蛛そして絡新婦、それが照らし出すのは紡織・淫売・女性解放。横糸の廻旋だけで終息する各々の事柄を、実は縦糸で絡めた蜘蛛の巣の核で駒を操り全て手の内にいれているのは誰なのか。堂々巡り幾度と繰り返した末に、明らかになるのは背徳・不憫な驚愕…一方でかなった理も立場・見方変われば蔑めとなる哀しさ…

2018/01/12

ちょろこ

絡め取られた一冊。1400ページ、逃げられない。京極堂をも手強いと言わせる蜘蛛は誰か…縦横まるで寸分の狂いもなく張り巡らされた物語の巣にすっかり身も心も絡め取られた。もどかしさと面白さを存分に盛り込み核心へといざなうようかに見せかけとことん惑わせていくこの策略にはただ感嘆の吐息。そしてそんな巣を飾るのは幾人もの心の涙の雫。その雫を時にせつなく心に取り込ませる魅せ方はもちろん、榎木津探偵の癒しの雫もたまらない。全てを見終えた今、こぼれ落ちる言葉はただ一つ。京極夏彦さん、あなたも…蜘蛛だったんですね…。

2021/07/27

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

蜘蛛は血を流して絃を紡ぐ。蟲は蟲らしく地べたを這いずり私は私らしく今日も春を売りに行きます。誰の血にか濡れた手は見えど顔は泣いていたのかそれともわらっていたのか、想像するこころは桜にみだれて。 むせかえる香におそろしさも忘れどこか微睡む私はもう巣に囚われている。のぞんで蜘蛛の餌食です。 人の命より大切なものなぞ、と偽善。あれは誰のかなしみか、血のにおいが嫌いです。白粉で武装した私は目をつぶされ桜につられた私は頸をつられます。かしづきなさい、蟲よ。おまえだけは私の味方でいてくれるのでしょう。共に地獄へと。

2021/02/08

優希

別々に起きた殺人事件が1つに集約される過程が見事でした。様々なところで事件が交錯していきながら、背景に張り巡らされた蜘蛛の存在が木場修等を惑わし、搦め捕っていく。その中心にいるのは誰なのか糸を解くように京極堂の憑き物落としが冴え渡るのは圧巻です。全てを操る蜘蛛の存在は自分の居場所を求める理由のみというのが恐ろしく感じました。黒い聖母や織作家の女系という宗教や女性論を物語に絡めているからこそ主張しつつも儚さと美しさをまとう切ない世界観が出ています。最初と最後が繋がることが何とも言えない余韻を残します。

2015/02/18

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