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ヴァイブレータ (講談社文庫 あ 90-1)

ヴァイブレータ (講談社文庫 あ 90-1)

ヴァイブレータ (講談社文庫 あ 90-1)

作家
赤坂真理
出版社
講談社
発売日
2003-01-01
ISBN
9784062735803
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ヴァイブレータ (講談社文庫 あ 90-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

1人称で語られる、自己完結性の強い小説。タイトルは『ヴァイブレータ』だが、それは即物的な意味ではなく、自身の頭の中で振動しつづけるといった象徴的なもの。もっとも、性的な意味ではやはり相手を必要としない存在でもあるだろう。たまたまコンビニで 出会ったトラッカーとの行きずりの男との逃避行的なセックスを描くが、それは私の「食べたい」という情動の発露の結果であり、一方通行ではないものの、やはり自己の内に終始している。そして、そのことはエンディングの「あたし」の言葉によっても確認されるのである。

2023/03/08

かみしの

透明な存在になるには当たり障りのない会話をする必要がある。その為には人の話をデータ化して保存し、適宜組み合わせながら最良の会話を出力していくのが楽な方法なのだ。自分はただ箱になればいい。膨大なデータベースとぶつぶつ会話をしていればいいのだ。この思考があっちこっちに飛んで分裂症的になることは、僕もよくある。そういう思考をそのまま書き記した本作の文章は、小説と現実の境界を溶かしていく。音は振動だ。文章が揺れ、思考が揺れ、僕たちも揺れる。この揺れを止めるのは、大きな存在による抱擁しかないのかもしれない。

2014/02/05

spica☆

赤坂真理さん初読み。映画化されていたのは知っていたので読んでみました。なるほど、独特の文章を綴られる方ですね。自分の中に自分の声が聞こえてしまう、拒食症の痛い女。でも一人の男性と出逢って旅をして。ぶっとんではいますが、心理描写や情景描写は生々しくて、いつのまにか引き込まれていました。この女性には優しい男を見つける神秘的な力が備わっていたからよかったけど、こんなにうまくいくわけではないよーと警告も感じつつ。(もちろん小説なんですがw)評判のいい映画のほうも見てみたくなりました。

2015/08/21

4fdo4

最近の赤坂真理とはちょっと違うのかもしれない。 刹那的な男女の話。 心も体もギリギリの女に 文脈をふっとばす電波が割り込んでくる。 主人公の女性が中3の時に国語の先生に理不尽にぶん殴られる話が出てくる。 ここも色々なキーになる。痛いほど分かる。 私も好きな先生なんていなかった。 先生と仲良くする奴なんて、媚び売る変なやつだと思っていた。 あいつらは敵だと思ってた。まあ中学生の考える世界だけど。

2016/06/19

ミツ

解説は高橋源一郎。いいなぁ、これ。『蝶の皮膚の下』に比べておとなしめで読みやすい。 笙野、鹿島田、川上未映子と同じ匂いがする。 自己を規定し形作ると同時に他者を拒絶し分け隔てる薄い膜としての皮膚。人の肌に触れるということは、その薄い膜を透過して相手と一つになりたいという同一化の欲望に他ならない。そして会話とは“声”という音の振動、固有の言葉をぶつけることで皮膚の下の、相手の中まで自分を響かせる行為なのである。 佳作。

2010/05/01

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