神の子の密室 (講談社文庫 こ 54-2)
神の子の密室 (講談社文庫 こ 54-2) / 感想・レビュー
雪紫
小森健太朗、キリストの復活に挑む。解説がないと少し作品への理解度が減るタイプ。密室にされた解釈と謎解きより第一部の様々なひと達が語るイエス・キリストとは何か?それを通じてなことが印象強い感が。小森さんの歴史ミステリらしい感はあるし、実はわりと雰囲気は嫌いじゃない。
2023/07/12
toshi
1997年の歴史ミステリー。あのイエス・キリストの死と復活の謎に挑みます。主人公はエジプトからの異邦人で、まずはイエスの人柄を知るために色々な人達に会います。イエスは毀誉褒貶のある人物で、中々人物評が定まりません。物語中盤ではイエスが十字架にかけられますが、主人公は死体が消失したのにはトリックがあるのでは無いかと疑問に思います。キリスト教の知識があった方がもちろん良いですが、私のように知識が無くても充分楽しめます。
2024/06/29
lily
イエスと同時代に生きたエジプト商人の視点を通じ、密室からのイエス復活の真相に迫っていく。安息日の時間差を利用した「脱出」はどこまで史実に即しているかはさておき、世界各地でイエス布教の逸話が残されている以上、なかなかに興味深い。前半部分のイエスの人物像を聞いていく場面も読み応えがある。詩人、革命家、遊女の味方、転向者、詐欺師、裏切り者。ここまで見る人によって評価が分かれるのも珍しいが、著者が「鏡のような人物」と形容するように、自分の内面が映し出される存在、ということなのだろう。古い作品だったが充分楽しめた。
2024/07/29
やまだん
「神の子」と呼ばれたイエスの処刑と復活について,イエスの死体が密室状態の洞窟から忽然と消えた謎に,本格ミステリ的な視点から解決を付けようとした作品。密室のトリックはシンプルかつ平凡。ミステリとしては及第点以下だが,イエスについて,エルサレムの人々に話を聞いた経緯を記した第一部を始めとした全体の雰囲気は嫌いではない。歴史ミステリなのに,変に難しくならず,平易な言葉で描かれてる点に好感がもてる。雑学的な知識も少しは得ることができるし,さほど期待せずに気楽に読めばそこそこ楽しめる作品だと思う(55点)。
2016/05/15
Tetchy
厳密な意味ではミステリではないだろう。キリスト復活という非常に有名な奇跡の謎について書かれたものだ。しかし西暦の始まり頃という、この悠久の時を超えて明かされる謎にしてはいささかチープな印象を受けるのだ。確かに書かれている内容は当時の各宗教の習慣や常識が詳細に記され、それに基づいた考察がなされ、理論的であり興味深いのだが、それが逆に仇にもなっているように感じてならない。さて小森氏が冒頭で述べたいつまでも公表されないイエスの復活についての記述だが、私はこれは関係者同様、公表は控えた方がいいと思う。
2010/03/19
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