麦の海に沈む果実 (講談社文庫 お 83-2)
麦の海に沈む果実 (講談社文庫 お 83-2) / 感想・レビュー
さてさて
ここは日本なのだろうかと思えるような不思議な学園世界が描かれるこの作品。その中で留学生のヨハンの存在が逆にここが日本であることを暗示させてもいきます。そんなヨハンが放つ表現。『日本語って視覚的にゴージャスな感じがしていいですよね。漢字は贅沢な絵みたいだし、ひらがなは無邪気で色っぽい』という表現はとても新鮮です。物語は後半にかけて一気に展開する中で、理瀬にまさかのキャラ変が発生!!そして、読者を振り落とそうとするかのように急に疾走を始める物語。これぞ恩田さんの真骨頂とも言うべき素晴らしい作品だと思いました。
2021/12/19
青乃108号
何と書けばいいのかな。面白かったと言えば面白かったけど、思っていたような作品ではなかった。作品で描かれる不可解な学園の世界はそれなりに魅力的ではあったので、結局最後まで読んだんだけど。色々仕込んではいるけれど何か納得出来ないというか、パズルのピースがピタっとはまって、ああ!そうだったのかっていう爽快感がない。なんか読後もモヤモヤした感じが残る。登場人物は多いけど、二、三人を除けばどうでも良い扱いだし。学園の造りは描写が下手くそでイメージが掴みにくい事この上ない。俺にとっては「サスペリアpart2」だった。
2024/09/17
SJW
消化不良に終わった「三月は深き紅の淵を」の続編という事で読むのが少し憂鬱だった。しかし「三月は...」連作短編だったがこちらはミステリーの学園ファンタジー長編で、恩田さん得意の学園もの、演芸、音楽などが散りばめられ、修道院跡に作られた架空の中高一貫校で殺人事件が起こり、湿原の中に閉じ込められており抜け出せないというミステリーにはぴったりの舞台。読んでいるとデジャブ??と思ったが、「三月は...」の最期の章が「麦の海に...」の予告編になっていた。これは恩田さんが試した○○的円環という手法らしいが複雑(続)
2018/04/10
パトラッシュ
リアルとファンタジーの狭間に閉じ込められた世界を構築させては、恩田陸の右に出る作家は少ない。ダークな風土に孤立する謎めいた学園が舞台のドラマは、そんな著者の手腕が最高に発揮されている。次々と生徒が死んだり失踪しても騒ぎにならず、外の情報が全く入ってこないのに誰も疑問に思わず、校長が男になったり女になったりする。そんな狂気と正気が入れ替わってしまう日常を読者も当然として受け入れてしまい、いつの間にか自分も時の流れという海に漂っている。人の愚かさ醜さを超越した永遠の時間こそが本書のテーマだと気付かされるのだ。
2024/01/22
ムッネニーク
68冊目『麦の海に沈む果実』(恩田陸 著、2004年1月、講談社) 『三月は深き紅の淵を』の中で描かれた理瀬の物語を膨らませ、長編にしたかの様な作品。登場人物は『三月は〜』と共通しているが、作中で起こる事件や物語の結末はかなり異なっている。閉ざされた環境と数多の謎が描かれた、ミステリーの魅力に溢れる作品ではあるが、クライマックスへと向かうにつれてどんどん小さく纏っていってしまったという印象を受けた。 「そう、私たちは皆、灰色の海にゆらゆらと漂っていた。」
2022/11/05
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