熊の敷石 (講談社文庫 ほ 29-1)
熊の敷石 (講談社文庫 ほ 29-1) / 感想・レビュー
遥かなる想い
第124回(平成12年度下半期) 芥川賞受賞 。 舞台はパリ郊外。 心なしか、異次元の雰囲気を 感じるのは、地名・名字が カタカナのためなのだろうか。 ヤンとの会話を通して、まるで 海外旅行をしている気持ちに なる。小さい頃に読んだ童話に 似ている。 フランスの寓話に行き着く旅…だが フランスの暗い私には、正直よく わからない…展開だった。
2014/04/26
ヴェネツィア
第124回芥川賞受賞作。ノルマンディーの田舎家で目覚めるところから始まるこの物語は、一見したところ淡々と無造作に語られているかに見えるのだが、実は精巧に組み立てられた構成から成っている。全編のクライマックスは、明らかにアブランシュの演劇祭にあるのだが、そこでは悲痛なユダヤ人一家の歴史が語られる。そこから熊のぬいぐるみ、辞書編纂者リトレの生涯、そして表題の熊の敷石へと語り継がれて行く。こうした一連のエピソードが、透明なノルマンディーの空気感の中で、しみじみとした感動を伴って読者の心に沁み込んで行くのである。
2013/03/07
kaizen@名古屋de朝活読書会
芥川賞】フランスで知人のユダヤ人ヤンとの再会。モンサンミシェルにでかける。家主のカトリーヌの盲目の息子ダヴィット2歳半。リトレ、センブルン、ベテルハイム。著名な人または著作の話が豊富。フランスらしい機転に富んだ内容と展開。フランス文学好きの自分は読んでいて飽きない。著者は仏文出。岐阜県多治見市出身。
2014/06/22
hit4papa
芥川賞受賞表題作を含む短編集。三作品いずれも美文で、異国の翻訳小説を読んでいるかのような独特の雰囲気があります。「熊の敷石」は、フランスに住む知人を訪ねた日本人翻訳者のひと時を描いています。そこで出会ったシングルマザーと全盲の幼児。物語の中心をなすわけではありませんが、幼児が抱く母親手作りの目のない熊のぬいぐるみとのシーンが脳裏に刻まれます。タイトルは、ラ・フォンテーヌの寓話が由来の、いらぬお節介の意味。ここに込められた著者の意図に激しく共感します。ちょっとした哀しみを感じるます。その加減が良いですね。
2021/06/22
NAO
「なんとなく」解り合えていると思っていた。基盤となるものは違っていても、同じような思いを胸に抱いていると思っていた。だが、自分は、相手にとって迷惑な存在でしかなかったのか。こういった主人公の思いは、誰でも一度ならず感じたことがあるのではないだろうか。他人同士である以上互いに完全に解り合えないのは仕方ないと割り切ってしまうのではなく、やっぱり「なんとなく」つながっていくことの密やかさ、やさしさを感じた。
2019/11/10
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