邪魔(下) (講談社文庫 お 84-4)
邪魔(下) (講談社文庫 お 84-4) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
えっ、こんなところで終わるのか、というのがまず最初に受ける衝撃。そして、一呼吸置くと、小説の終わり方としては実に上手いなと深く納得。もっとも「伏線の回収」などと言う人には許せない作品だろう。あれはどうなったのだ。この問題も未解決じゃないが…と。恭子と九野が抱える孤独の深さを、それぞれの日常の中で鮮やかに描き出して行く。恭子が一人で車を運転するシーンの不安定さは、まさに彼女の人生そのものだ。物語の終幕後の闇も深い。それは恭子にとっても九野にとってもそうだ。第1級のエンターテイメント小説だった。
2018/09/07
Atsushi
下巻は怒涛の展開、ページをめくる手が止まらない。平凡な主婦及川恭子の転落ぶりが坂道を転げ落ちる自転車のようですごい。ありふれた日常のささやかな幸せは、心もとないもので些細なことからガラガラと崩れてしまうものだと思った。ラストの井上刑事と不良少年との会話にちょっと救われた。
2018/07/14
ehirano1
著者は”追い込まれたヒト”の描き方がうまいなぁと思います。人各々に特有の”邪魔”があって、本書はそれを各々のシーンに合わせて見事に表現しており、なるほどなぁと呻らされました。群像達は”邪魔”を排除することに固執するあまり軈ては破滅します。しかし破滅の後には〇〇が残り、というより寧ろ〇〇が姿を現し、そして群像達は人生を再開します。因みに、九野や恭子の続編があれば読んでみたいです。
2016/05/27
AICHAN
Book-Off本。本格的な警察小説だな、本格的なサスペンス小説でもあるな、本格的な推理小説でもあったな、本格的な企業小説的なところもあったな、本格的な家庭小説でもあったな。それが読後感だ。それだけてんこ盛りなので上下巻の長編になったのだろうし、多少読みにくい展開にもなったのだろうと思う。図書館に寄贈。
2019/08/11
kishikan
奥田の第2作、インザプール、空中ブランコから読み始めた僕にとっては、最悪とこの邪魔はいささかシリアス過ぎて、読むのにつらさも覚えてしまう。これでもかこれでもかと、繰り返される不安の表現は、フィクションとはいうものの、犯罪発生の確率からみると、こういうものなのかもしれないと、思わず思ってしまう。とはいうものの、Dr.伊良部のエンタテイメントも面白いが、あわせて、このシリアスな<2文字>シリーズも魔力のような奥田らしい文体に魅せられてしまいます。だから読むのをやめられない。
2008/02/11
感想・レビューをもっと見る