美貌の帳 (講談社文庫 し 54-10 建築探偵桜井京介の事件簿)
美貌の帳 (講談社文庫 し 54-10 建築探偵桜井京介の事件簿) / 感想・レビュー
セウテス
建築探偵桜井京介シリーズ第6弾。seasonⅡの始まりという事で、京介と深春は大学を卒業しフリーター、蒼は高校生になっている。鹿鳴館の建築に携わったジョサイア・コンドルの、謎に満ちた人生とその推測は興味深かった。物語は「卒塔婆小町」の舞台に絡んだ40年にも渡る愛憎劇、女としての喜びを遺そうとする愛、愛する者の幸せの為に口をつぐむ愛など、人それぞれの愛の形が描かれる。とは言え、主要メンバーの内面描写やワトソン役としての蒼の成長など、シリーズならではの楽しみは健在である。ミステリより、歌劇の様な印象の作品だ。
2019/04/23
Tetchy
シリーズの第二部の幕開けとなるのが本書。ジョサイア・コンドルという日本の建築学の基礎をたった一人で築いた人物という彼の経歴はなかなかに読み応えがあった。深春や蒼の過去の事件を経てから篠田氏のこの物語世界の描き方は以前よりも濃密に感じるし、少女マンガのステレオタイプのように感じた登場人物像も立ってきて厚みが増したように思う。ただ物語に流れる諦観めいた陰鬱さは相変わらず。この暗さがもう少し解消されればいいのだが。個人的には深春と京介の邂逅を描いた『灰色の砦』のテイストを望みたい。
2011/04/25
ち~
建築家探偵シリーズ。ホテルの記念パーティーで上演される舞台に、若くして引退した伝説の女優が復活する。パーティーに呼ばれた京介と蒼。演出上の諍いで演出家が失踪、オーナーの自宅の火事、支配人の死と事件が起こる。さらに昔に起こった、京介の高校時代の先輩の兄の死。これらがどう絡むのが予想がつかないまま、前半はやや間延びした展開だった。今回はミステリーというより、時代を経たロマンスの方が目立っていた印象だった。
2015/08/25
薫子
再度。お気に入りの原罪の庭の次に読んだからか、ちょっぴりペースはゆっくりめで読了。蒼が悩んでます。ぐるぐるしちゃってる。そして京介も彼なりに悩んでる。けど、深春は変わらず真っ直ぐで。彼らの関係性、ホントに好き。物語としては、天沼龍磨の言う「愛」が重苦しくてエゴイスティックで受け付けない。それを真正面から受けていた芙蓉さんてすごい。それぞれの思う「愛」がそれぞれに伝わらなくてもどかしい。
2014/07/15
瀧ながれ
テーマのひとつが「演劇」だからか、描写のあれこれが舞台演劇のように見えた。退場の仕方や登場の場面、会話のときにスポットライトが当たっているような感じなど、誰もが何かを演じていることを表すようで、たいへん興味深く読んだ。『桜闇』へのつなぎという気持ちで読み始めたのだが、思わず引き込まれた。初読のときは、彼らの未来が不安だったのが、今回は素直に楽しめたからかもしれない。
2013/10/05
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