言い難き嘆きもて (講談社文庫 お 2-13)
言い難き嘆きもて (講談社文庫 お 2-13) / 感想・レビュー
belier
90年代末期の文章が収められている。大江のエッセイ集は時事問題が語られる部分があるが、今との違いでなく停滞しているのが確認できた。さて大江はノーベル賞受賞時に小説家引退宣言をして以来スピノザを読んですごしていたが、ここで小説再開の報告をしている。「じつに、私の人生は小説よりほかになかった!」と。この後にどれも素晴らしい長編を8作品も出しているのだからとんでもない作家だった。『宙返り』、『取替え子』の創作秘話が語られている。あと実は若い頃からプルーストを熱心に読んでいたことを明かしている。これも貴重な話。
2023/11/10
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