ピピネラ (講談社文庫 ま 51-1)
ピピネラ (講談社文庫 ま 51-1) / 感想・レビュー
えみ
なんてこと!?どんな展開!?…といきなりド肝を抜かれた冒頭。山脇加奈子と一緒に混乱したのは言うまでもない。更に追い討ちをかける「ピピネラ」という不思議な言葉を残して消えた夫。夫の足跡を辿る加奈子の耳に届くのは、陶芸作家夫婦の存在とそれに付随するように登場する鳥人間像。怪しい、妖しい、あやし過ぎる。籠の中の鳥は幸か不幸か。謎の「ピピネラ」耳に残る…呪文の言葉みたいだと思ったけれど、意味を知った今ではそれも「遠からず」な気がする。人は少なからず何かに束縛されている。籠とピピネラ、束縛と自由を描いた物語。
2020/05/29
タカギ
「ピピネラ」でピンときた人はきっと子どもの頃からの読書家だと思う。自分は読書家ではなく海外文学に馴染んでもいないので全然だったけど、知ってても知らなくても無問題。勿論、知っていたほうが理解は深まるはず。文学探偵的な楽しみ方。主人公の主婦・加奈子の夫が「ピピネラ」という言葉を残して失踪した。加奈子は友人と共に夫の足跡を追う。怖くはないけど一種のサイコサスペンス。鳥籠、人形、かつての恩師、電車での旅、北へ。彼女に実際には何が起こっていたかハッキリ分からないのがちょっと不気味だった。
2023/02/01
ピップ
「ピピネラ」という言葉を残して夫が失踪する話。松尾由美さんの小説としては、少し毛色が違う気がしました。夫を探す過程で、いろんなものの印象が変わってくるのはおもしろかったです。ですが、衝撃的なことも起こらなかったので肩透かしを食らった気分。ただ、精神的な話なので、自分が思っている以上に登場人物たちは救われているような気がします。
2021/09/16
onasu
「ハートブレイクレストラン」で、守備範囲にないとしていた著者でしたが、失踪した者の足取りを鉄道で追う、てのを何作か読んでいたので、こちらもと。 結果としては、もやもやも残るが、数日前に姿を消した夫を追い、偶々現地で知己の協力も得られて…。主人公加奈子の体の変調も絡めて、てのもそそられはしたが、何だかなあ。すんなり過ぎるとは言え、夫の辿った跡を友人の千紗と追うくだりは、おもしろかっただけに拍子抜けしてしまう。 編集者の夫というのが、先日読んだ柚木さんの新作ともかぶってしまい、読み合わせも悪かったかな。
2016/07/30
竜王五代の人
再読。この作家の作品の中でも、かなり収まりの悪い方だと思う。ピピネラ論はともかく、主人公本人(かなり受け身で消極的)の物語も・夫・友人・恩師のも、どれもきっちりしてないのだ。そこがどういうことなのか、読者に解釈を迫るところがある。結局、長い「奇妙な味」な小説だな。
2023/07/01
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