新装版 市塵(下) (講談社文庫 ふ 2-17)
新装版 市塵(下) (講談社文庫 ふ 2-17) / 感想・レビュー
ふじさん
家宣の意向を受け、外交内政の両面で政治顧問として難題の解決に挑んでいく。朝鮮使節への対応、南蛮人シドッチの取り調べと海外の新知識の吸収、経済立て直しのための通貨改革等。家宣の死後は、幼君家継を支えながら、家宣の遺志の実現に奔走する、長崎貿易の改革、金銀改鋳の事業等に。家継の死と共に、役職を退く。市井から出て多大な実績を残した新井白石を多くの資料を駆使して書き上げたまさに藤沢周平の力作。漢字が多く、莫大な歴史の事実が綴られており読むのは楽ではなかったが、白石への作家の強い思いが伝わってくる傑作だ。
2022/10/27
Book & Travel
比類なき知識と将軍家宣の絶大な信頼のもと、儒者ながら政治の中心となる白石。信念を曲げず主張を通す強さから敵も多い。やがて吉宗の将軍就任とともに失脚、自身を否定されるような新政策に悔しさを覚えつつ、著作活動に勤しんでいく。自伝に基づいて重く淡々と書かれる物語は読みやすくはないが、読み終わって悪くない余韻が残るのは、人の心の機微を描く藤沢作品らしさが感じられるからだろうか。詳細に記述される朝鮮通信史待遇などの政策の合間に、政敵にプライドを傷つけられて怒り、持病に苦しみ、子を心配する白石の等身大の姿が描かれ~
2018/01/23
けぴ
キリスト教を布教に来たシドッチとの教養高い会談、朝鮮使節団に謙ることなく対等に遇するやり取り、悪貨に改鋳された金貨銀貨を元に戻す方策など、新井白石の高潔で真摯な生き様が心地よい物語でした。しかし徳川吉宗の時代となり普通の人として市塵に戻る。晩年は著作活動を営むが死までは描かれずに完結となる。面白かった!
2021/11/27
kei302
将軍が代替わりして、白石は失脚し引退。そのときの心の持ち様の清々しいこと。「あ――、清々した!」後は好きなことを思いきっりするぞ~、みたいな。藤沢さんはそんなくだけた書き方はしてないけど、読んでいて心の声が聞こえてきました。◇海坂藩城下町 第8回読書の集い「冬」参加中
2023/01/18
matsu04
巨利を貪っていた悪徳役人を罷免に追いやり財政を安定させ、朝鮮通信使との厳しいやり取りでは外交のあるべき姿勢を示し、誤まった前例踏襲やその場しのぎの事なかれ主義を敢然と排す…。政治はいかにあるべきか、現代政治にも通じる藤沢版政治の要諦とも言えよう。そして、将軍交代に伴う白石の権勢失墜は、今も変わらぬ宮仕えの悲哀であろうか。「よかれ悪しかれ新しい時代がはじまり、古い時代の登場人物は舞台から去るしかないのである」…、ううむ。力作である。(再読)
2016/11/09
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