紫の領分 (講談社文庫)
紫の領分 (講談社文庫) / 感想・レビュー
hit4papa
横浜と仙台で二人の女性と二重生活を続ける塾講師の物語。ウィトゲンシュタインに言及するなど、自己の生活に何やらテツガク的な意味を持つかのような心情が、同僚の突然の自死と絡んで、つづられます。結局、二人の女性と図らずも同棲することになった男の、詰んでしまった様の言い訳にしか思えません。出張の名目の行ったり来たりで、コートをかえる、下着を仕分けるなど高尚とはかけ離れたせせこましさ。どう決着がつくのかが楽しみになる…が、主人公には、二人を論破する不敵さを見せて欲しかった。期待したのに、テツガク的でない幕引き。
2022/05/02
harass
ヴィトゲンシュタインの哲学をモチーフにしていると聞いて読む。SFではないのでこういう内容が限界なのかと。仙台と横浜で二重生活を長年続けている予備校の数学講師が同僚の講師の自殺を知らされる……。いつもの現世のいらだちと逃避のテーマがちらつく印象がある。通俗を避けようとしているのはわかるが感情移入を拒んでいる風に見えて唐突さや説明不足を感じる作風なのは相変わらず。辛気臭い作家だが相変わらずの独特の描写力と文体に面白さを感じるので全作品を読むつもりでいるが。
2014/04/16
ゆっ
藤沢さんらしい男臭い話。久し振りに読んだけど、やはり息づかいが聞こえてくるような細かい描写。主人公手代木は最終的に何をしたかったのか…って思うのは野暮なんだろう。
2015/10/24
steamboat
横浜と仙台で二重生活を送る男の話。地の文や会話の脈絡がなさすぎて正直読むのが苦痛だが、読み終えてみるとストーリーや主人公の心情もなんとなく理解できている不思議。雰囲気を読ませられている感じ。
2015/05/23
sibafu
天秤が横にずらっと並んでいて、その秤の真ん中をずっと歩いているような感覚。右にも左にも行き過ぎない。結局どちらにも行かず、降りていい時がきてめんどくさいと思いながらも、心の別のところではその時機を待っていたのだと、その時になって気づく。死んでいる者は生きているし生きている者は死んでいる、どこまでが想像かわかりにくい。紫色のゼリーを握ってみて、確たるものがないとわかり、それはそれで悪くないと最後に思う。
2013/01/22
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