其の一日 (講談社文庫 も 33-5)
其の一日 (講談社文庫 も 33-5) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
歴史を作るのは権力のある人なのかもしれない。それでも名もなき庶民たちもそれぞれの想いを抱えて、懸命に生きていたのだと実感させてくれる短編集。どの作品も面白いが、私の好みは最後の「釜中の魚」。井伊直弼と若いときに恋仲になり、桜田門外の変で浪士に暗殺される直弼を救おうとする女性の情念が、現在と過去を自由に行き来するプロットの中で描かれている。歴史の大きなうねりを女性は変えることはできない。それでも大きなうねりに体当たりしようする覚悟は読者の心を揺さぶる力を持っている。
2013/12/07
けやき
江戸時代に生きるそれぞれの主人公の一日を切り取って描いた短編集。「立つ鳥」「蛙」「小の虫」「釜中の魚」。荻原重秀の「立つ鳥」や恋川春町の息子の「小の虫」はなかなかに面白かった。でも1番は井伊直弼の密偵だった女性の可寿江が主人公だった「釜中の魚」かな。
2021/01/14
優希
ある人のある1日を切り取った短編集。たった1日でも密度が濃く、江戸時代を舞台にした大河ドラマを見ているようでした。
2022/06/08
i-miya
(諸田玲子) 静岡市生まれ、上智大学文学部英米学科卒。外資系会社勤務のち作家・翻訳。1996、『眩惑』でデビュー。2003、『其の一日』で第24回吉川英治文学新人賞。(カバー装画:蓬田やすひろ)(カバーデザイン:若月清一郎) (カバー) 安政07.03.03、井伊家密偵・可寿江、水戸浪士の不穏な動き、察知。主君で恋人の直弼に通報しようとするが・・・。「箕輪心中」 江戸市中、懸命に生きようとする人々。4編。
2011/07/24
baba
人生を変えるかもしれない長い一日の短編集。短編ではあるが、どれも濃密な一日が描かれていて、思わずその後も知りたいと思ってしまった。「蛙」は女として苦しい状況にも関わらず毅然として事態に臨む姿が印象的。最後の「釜中の魚」は歴史上で知っている事なので時間の流れのドキドキする。
2016/09/11
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