マドンナ (講談社文庫 お 84-5)
マドンナ (講談社文庫 お 84-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『ガール』の姉妹篇。(『マドンナ』が2002年、『ガール』が2006年)。主人公はいずれも40代半ば、大手企業の中間管理職の男性。あちらを先に読んでいたものだから、あの痛快、爽快に比して、こちらはなんだかしがなく、ちょっと情けなくもあり。まあ、同性として身につまされなくもないのだが。5つの短篇から成り、語りの上手さはいかにも奥田英朗の小説といった趣き。篇中では「ボス」が一番面白いと思ったが、これとても輝いているのは女性の上司である陽子。また、次の「パティオ」でもカッコいいのは「おひょいさん」である。
2022/12/17
きさらぎ
女性目線からの『ガール』に続き、男性目線からの『マドンナ』 派閥、慣習、社内恋愛、新任上司との軋轢、離れて暮らす老親。今の時代、抱える問題は男女ほとんど関係ないようだが、やっぱりちょっと違うかな。特に「マドンナ」どうにかなろうなんて思っていなくても密かな恋心を社内の誰かに抱いたとき、夫は気付かないが妻はすぐに夫の変化に気づいてしまう。不安になりながら静かに見守る妻が素敵だ。ここで重要なのは「ちょっとした恋」であること。「本当の恋」をしてしまうと話はややこしくなる。中年以降の男性はどこかに共感するはず。
2017/09/30
再び読書
表紙を見て「ガール」読み同じ路線かな?と思い読み始めたら、これも一気読みに近い。40台サラリーマンの悲哀がにじみ出る、爽やかな読後感が残る。結局自分ひとりが頑張っていると空回りし、周りはそれを転がしている。また旦那から、家事だけで楽をしているという思いに復讐を遂げる。人それぞれ立場や役割があるから、世の中平和に回るということを確認させられる本でした。少しつらいところもありますが・・・
2013/02/19
にいにい
奥田英朗さんの5篇の短編集。奥田さんお久しぶりだな。いずれも40代の中間管理職が主人公。表題の『マドンナ』での妄想は無茶苦茶で楽しい。妄想に伴う嫉妬で殴り合えるんだ?その他の作品も、妥協、混迷、想定外の上司に振り回されるなど、ありそうで、極端すぎる場での奮闘・安らぎが描かれている。その姿に、驚き、イラつき、共感してしまう。家族や会社や、自分の尊厳を大事にする人たちの存在とホッとする癒しが心地よい一冊。「パティオ」は、最もほっこりしたな。奥田さんは短編も読みやすくて楽しめる。
2014/01/18
kishikan
中年サラリーマンに捧ぐ・・・、であろうか。フィクションであることは分かっていても、いつも奥田の小説のラストには、じーんときてしまう。主人公は、いつも嫉妬、邪推、独善的な人間ばかり、いらいらしてしまう。でも、世の中捨てたものじゃないよ、と彼の小説を読むと思ってしまうのだ。現在のような、混沌としたわけの分からない、それも身勝手な人間ばかりの社会だからこそ、この短編集にある「パティオ」などには、じんじんしびれてしまう。うまいなぁ~。
2008/05/13
感想・レビューをもっと見る