日曜日たち (講談社文庫)
日曜日たち (講談社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
吉田修一は2作目。最初の『パーク・ライフ』を読んだ時にも思ったが、この人は都会のふとしたリアリティを捉えるのが巧みな作家だ。今回も同様。ここでは日曜日を軸とした5つの連作短篇が展開する。いずれも独立した物語で主人公もそれぞれに違うのだが、母を探す小学生の兄弟の挿話が全体を貫流するサブ・プロットとしてうまく機能している。5つのお話はそれぞれにちょっと「せつない」。そして、最後に置かれた表題作「日曜日たち」は大いに「せつない」。5つの物語の主人公たちは、みんなそれぞれに何かを失くしている。それがまたいいのだ。
2016/01/16
yoshida
月並みな表現だが、泣きたくなるような良い作品だった。日曜日に起きる様々な出来事を幼い兄弟を通して描く連作短編集。全五編で構成。どの短編にも読書の心の琴線に触れる痛みや悲しみ、そして優しさがある。満員の新幹線での幼い兄弟の席の間違いの場面、九州から上京した父と鮨屋に行く時に佇む空腹の兄弟、母親が住んでいると思い訪ねて来た見ず知らずの兄弟を転居先に送る場面。登場人物がもがき疲れながらも見せる優しさ。そしてその優しさの伏線が回収されるラストに勇気と暖かさを貰える。読者の毎日との投影しやすさが共感と暖かさを生む。
2018/04/11
おしゃべりメガネ
なんとなくで読み始めましたが、調べたら11年ぶりの再読で、さすがにほとんど話を忘れていました。タイトルにあるように様々な環境にある人それぞれの、とある'日曜日'を描き、そこに不思議にリンクする小学生の兄弟との連作短編集です。吉田さんが書く男性はダメ男が少なくないですが、どこか憎めないホッとする優しさも持ち合わせています。恋人を失った男性の父親が上京し、その父親も奥さんを亡くしてる話がとても印象的でした。最後のタイトル作で一気に感動の波を引き寄せる'銀のピアス'の話がとても素敵で涙なしには読めなかったです。
2020/09/27
酔拳
再読です。連作の短編集です。5つの話から構成されています。それぞれ東京で暮らす違う人達の話ですが、話の途中でリュックを背負った小さい兄弟ができて、つながっています。 吉田さんは、、現代に生きる人たちの、心理や距離感を描くのが、とてもうまいです☆ 最後の章「日曜日たち」のところでの、小さい兄弟の顛末はとても涙なくしては、読めなかった★
2016/02/14
ミカママ
タイトルに敬意を表して、日曜の朝から読み始め、お昼前には読了。夢中で読みました。あるある〜、日曜日(特に日曜の夜)ってドラマが起きがちなんだよね〜、と妙に納得しながら。どの物語も好きなんだけど、「日曜日のエレベーター」の渡辺と圭子、幸せになって欲しかったなぁ。ラストで小学生の兄弟二人の事情が明かされたのは、出来すぎなような。ある意味ハッピーエンドで読後感至極よろしい。
2014/08/04
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