河馬に噛まれる (講談社文庫)
河馬に噛まれる (講談社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
奇妙なタイトルなのだが、物語は日本人青年がウガンダで河馬に噛まれ、大けがをしたという新聞記事を読んだところから始まる。彼は、実は1971年の「連合赤軍事件」に関わりがあった。小説は1983年11月から1985年10月まで、いくつかの雑誌に断続的に発表された連作短編集の形をとるが、「連合赤軍」を1つの核としながら、この間の大江自身の日常とフィクションとが絡み合い、混じり合ったまま語られていく。この時期の大江文学を読むと、不特定多数の読者にというより、ある程度限定された層に語りかけているとしか思えない。
2012/09/10
新地学@児童書病発動中
左翼運動のリンチ殺人事件という重いテーマに正面から向き合った1985年の作品。大江さんの知り合いの青年もこのリンチ殺人に巻き込まれたようだ。小説を書くことを通してその青年に寄り添おうとする姿勢は素晴らしい。ただし、連作という構成を取って焦点がぼやけているのは残念。それでも5編目の「死に先だつ苦痛について」は、癌で死んでしまった友人とリンチで殺された活動家を結びつけることを通し、不条理に満ちた死を描いて充実した読後感がある。アフリカの河馬という滑稽なイメージがこの暗い小説に詩的な輝きを与えている。
2013/10/09
おいしゃん
かなり身構えて読んだが、意外に読みやすい、と思うところもあり、しかしやはり全般的に、読解力、政治思想の知識の少なさに、歯痒い思いを強いられた。大江氏の別の作品にもいつかチャレンジしたい。
2014/08/29
Vakira
Kさんの小説の題名は僕を惹きつける、カッコイイのが多い。しかし、この本、この題名は何?なんかコメディータッチのイメージ。そんなのが禍して読気が失せると思いきや逆に気になった。河馬である。鰐でなくて良かった。鰐なら生還出来なかっただろうから。いや、Kさん、敢えての河馬。それは度々登場するKさんの好きなブレイクの詩ではなく、エリオットの詩から。河馬でなくてはならない。血と肉の塊。美味しいマンゴは木が高すぎて食べられない。でも天使の羽が生えるのは河馬なんです。何もしなくたってマンゴが届けられる教会。
2023/06/28
たぬ
☆3 これは私小説? いやむしろ思想書…? 題名から面白おかしいアフリカ滞在記かカバ担当飼育員の苦労話かなと勝手に想像していたのだが全然違った。仲間内のリンチ殺人がむごい。どこまでが実体験なのかわからんけどあんな穏やかそうなお顔で3Pどころかスカトロプレイまで。しかも奥様は出産のため不在。クズです。最後のほうはだいぶ飛ばし読み。私の知能ではこの本はレベルが高すぎた。
2022/11/09
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