文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)
文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫) / 感想・レビュー
nobby
冒頭から彼は問う「貴方にとって生きて居ることの意味は?」数百羽もの鳥の剥製で溢れた“鳥の城”で次々と死にゆく花嫁達、そこに君臨する黒い鶴は鳥の女王か陰摩羅鬼か…前作でシリーズ整理したかの様に今作はシンプル展開で読みやすい。それでも「不思議なことなど何ひとつ起こっていない」事件が繰り返す様には翻弄される。今回の語りは儒学の見地、生と死を魂魄を例に語り、また存在の有無や家族から孝を語る。その荒唐無稽ともいえる真相に、嘲笑さえ吹き飛ばす驚愕に圧倒されながら、悪意なき解釈の相違による瑕(きず)がたまらなく切ない…
2019/03/07
ちょろこ
せつない一冊。今作は前作が派手派手超長編だっただけに、地味目というかスタートから盛り上がりには欠けた。でも湖畔に佇む洋館「鳥の城」を舞台に婚礼の晩、死す花嫁の謎を解く展開は雰囲気から好み。関口さんと大御所作家とのシーンは書楼弔堂っぽくて好き。榎木津さんは叫んでばかりながらもやっぱり癒し。5人目の花嫁の死は阻止できるのか…犯人は薄々わかってしまうけれど、京極堂の憑物落としが一気にしんみり、せつなさを運ぶ。取り巻く世界、普通か否かのその違いの要因に胸打たれ、ミステリとしてはシンプルながらも忘れられない巻。
2023/10/08
優希
ミステリーとしてはフェアではないのですが、そこがこの物語の意図とも言えるでしょう。湖のほとりに佇む洋館「鳥の城」で起きる殺人事件。犯行が可能なのは由良伯爵ただ一人。その可能性が否定された中で犯人を見つけていくという常識を超えた物語の展開に引き込まれます。伯爵が犯行不可能であれば、一体誰が犯行に及んだのか。伯爵の真実とは。全てが明らかになったとき、物哀しさが刺さりました。呪われた由良家の静かさが印象的です。秋彦さんの付き物落としで物語の瑕に抉られる感覚が何とも言えない心持ちにさせますね。
2016/12/26
とも
静かでゆっくりと楽しむことができた。 お盆の時期だっので、 私のまわりにある葬式、火葬、墓、仏壇、位牌。死ぬこと、生きることについて考えさせられた。
2021/08/18
ゆいまある
今昔続百鬼―雲から繋がる話なので、百鬼夜行コンプを狙うなら発行順に読むべきでした。私は飛ばしちゃってたので悔しい思いをしながら読む。事件に直面し壊れていく関口君。今回は榎木津の暴れっぷりが心地いいですし、京極堂も変わらずクール。でも今ひとつキレがない。そう、長い。最初の160ページぐらいはポエムみたいだし、1000ページ過ぎてからようやく話が動き出す感じだし。せめて800ページぐらいにまとまっていたらもう少し爽快感があったのに。鉄鼠が最高峰で、そこから失速して塗仏でダレて、ちょっと復活してる気はします。
2019/10/20
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