分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(下) (講談社文庫)
分冊文庫版 陰摩羅鬼の瑕(下) (講談社文庫) / 感想・レビュー
セウテス
下巻。5回目の悲劇も、食い止める事は出来なかった。鳥の城に乗り込んだ、京極堂の推理が繰り広げられるのだが、やはり此方の予想の域を出ないものであった。ミステリとしてはたぶん物足りなく、連続した事件となる事にも様々な問題点が残る。と言うか、最初にきちんとした確認が在ったならば、その後の悲劇は無かっただろう。事件の構造自体が特殊過ぎてしまい、その意味に於いても犯罪小説としては興味深い。しかし根底に百鬼夜行がテーマに在る物語だからこそ、生と死の定義などの論説を愉しく読めた事も確かであるが、スッキリとはいかない。
2020/11/28
えみ
知らないから知っていることだけで世界を構築する。その世界で死を語る。…あんまりだよ。ほんと、哀しすぎる。『陰摩羅鬼の瑕』全三巻の最終巻。遂に連続花嫁殺人事件に終止符が打たれる。最初から真相が見えていた榎木津礼二郎とすべての真実を暴いた中禅寺夏彦、そして誰よりも同調し心を尽くし憂い疲弊した関口巽。今回は正直一番の功労者だと思う。忌まわしき過去から驚愕のはく製の正体まで細部に亘って仕掛けられていた呪い。いま中禅寺の憑き物落としによってこの鳥屋敷の全貌が明らかになる。そして犯人の正体も…。死とは何か、とは何か。
2022/05/09
佳乃
あぁ、やっぱりそうだったんですね。なんと哀しいことでしょう。伯爵には人の普通と思うことが解らなかったのですね。だから、伯爵は嘘偽りのないことを言っているから謎が謎のまま繰り返されていたのですね。「死とは」それさえ解っていれば、そんな悲劇はなかったのだろうし、憑物落しをする京極堂も、まして関口君もあんな哀しい顔をしなくて済んだのに・・・
2018/06/29
*maru*
解決編。「未来なんてものは選べない。自分で決められるものじゃない。でも、過去は選べるんですよ」。死という概念と存在するという事。重要且つ重厚な死生観をテーマに定められた天命に翻弄された人間が生と死のあわいに震え、怯え、涙する残酷すぎる物語。自分が疑いもなく常識だと思っている事柄も、他から見れば非常識だと思われる事もあるだろう。そして、ひとつの出来事から認識され導き出される結論は凶事にも吉事にも成りうる。結果が見えていただけに珍しく積極的だった関口の姿が、その苦しみが…余計に辛い。
2017/02/13
あや
再読。ただただ哀しい。自分の世界が、揺るぎないものだと信じているその世界が、突然壊されてしまったら…。哀しくも恐ろしい事件でした。
2015/11/30
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