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ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2)

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2)

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2)

作家
小川洋子
出版社
講談社
発売日
2007-04-13
ISBN
9784062756938
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ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2) / 感想・レビュー

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ろくせい@やまもとかねよし

「ブラフマン」は裏表紙に謎とあったが、個人的には人類が理解しきれていない万物の摂理のようなすべての原理原則を表す言葉と捉えていた。そのため、強烈な言葉「ブラフマン」に引きずられ読み進め、突然の喪失で読了。しかし、読後感は悲観的ではなく、むしろ心地よい安堵を感じる不思議な感覚だった。奥泉さんの解説が理解を深める。物語には固有名詞が「ブラフマン」以外登場しない。そのため、登場事物に過去も未来もない。しかし、世界は見事に構築されると。意識で捉える実存を言葉で共有する挑戦もしくは共有しなくてもよい提案だったのか。

2020/02/26

ヴェネツィア

静かな静かな物語。そもそも物語の語り手である僕は孤独だったし、また孤独を愛してもいた。その僕と、精神的なつながりを持っていたのは碑文彫刻師くらいのものだった。墓碑銘を彫るのが彼の職業であり、墓石の冷たさもまた隠喩的にこの世界の静けさを語ってもいた。そんな僕のところに突然に現れたブラフマン(謎)。それを架空の動物にする必然性はやや不分明だが、おそらく作者にとっては、この物語世界全体を仮想空間にする必要があったのだろう。エンディングは表題が示す通り。物語が始まる前よりも、もっと静かに終わっていく。喪失の物語。

2012/09/07

さてさて

名前がないことで顔をイメージすることができない登場人物たちの一方でこの『ブラフマン』は”194回”も名前が登場します。しかし、こんなにも名前が登場しても顔どころか、姿さえもイメージできないのがこの『ブラフマン』です。光が当てられ続けているのに存在が浮かび上がらない不思議感。淡々とした”モノ”の描写の上に、顔が見えない人間たちが淡々と日常を過ごす様が描かれるこの作品。滑らかに、美しく、そして静かに語られるその物語世界の中に、小川洋子さんらしい静謐さをじっくりと味わうことのできる、なんとも魅惑的な作品でした。

2021/08/28

海猫

久々に読む小川洋子作品。物語の奥行きをあえて見せない書きようは静謐でラストは唐突ながらも深い余韻がある。小説を読んだ、というよりは一枚の絵画を見つめていたような味わい。そこにはラフスケッチのように簡素さもあるし、シュールレアリスムのごとき不思議さも感じる。

2014/06/18

mae.dat

〈創作者の家〉で働く、何処にでもあるって訳ぢゃ無い日常が静かに流れて行きます。安定の洋子さんワールド。そこに突如現れた謎の生物。ブラフマン〈謎〉と名付けたましたが、その姿を想像するのが楽しい。はじめは具体的な動物を置くのですけど、小出しに説明される度に、そのイメージは何度も何度もひっくり返されるの。その度に再構築を余儀なくされるのですけど、途中で破綻。結局最後迄具体的に何かは示されず。ほぼ間違いないと思っていますが、想像上の動物ですよね。答え合わせしたいなぁ。ラストは予定調和なのか(ó﹏ò。)。

2022/11/25

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