腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
芥川賞以前の作品で三島賞の候補作となったもの。タイトルはなかなか過激で煽情的なのだが、内容も負けていない。今時には珍しいくらいに情念的。中上健次を思わせる。もっとも、この人の作風が常にこうというわけではなさそうだが。自らの美貌に縋り付くあまりにアイデンティティを喪失する姉の澄伽。一方、その陰にいながら自己の道を進む妹の清深。この小説は、社会との違和の中で行き場を無くした(求める)怒りの表出の物語であり、また本質的な孤独の物語なのだろう。
2017/10/11
青葉麒麟
ゾクゾクする程、面白かった。演技の才能なんて一ミリも無いって指摘した父親と妹を殺そうとする姉・澄伽や両親の事故死を漫画のネタにしちゃいそうで困っちゃう妹・清深や何事にも鈍いけど義妹に笑顔で呪いの人形を手渡す義姉・待子の三人のキャラが強烈過ぎ(^w^)最後の澄伽の独語は読んでる此方か気が狂いそうだった。あー、面白かった(*´∀`)
2013/04/20
新地学@児童書病発動中
女優になることを目指して東京に行っていた主人公の女性が、両親の死のために田舎に帰って来るところから物語が始まる。自分が特別であると思っている主人公が痛々しい。他の登場人物たちも屈折したところを抱えていて、読んでいると胸が塞いでくる。印象的なタイトルは何を示しているのだろうか。自分が特別でないと気づくことから、新しい人生が始まると思う。その意味でこの物語は閉塞状況からの突破の物語だと言える。
2016/07/21
めろんラブ
パンチの嵐をくらう。まずタイトルに右フック、そしてストーリーに左ストレート、キャラの造形に右ストレート、メーターを振り切る展開にアッパー。読後は鼻血ダラダラ、顔面ボコボコ、レバーもやられて、まさに満身創痍w凶暴なエネルギーを出し惜しみせず攻め立てるSっ気満載の本谷さんらしい作品。露悪もここまで突き抜けると爽快感すら覚える。クライマックスの文字通り”劇的な”盛り上がり、会話の洗練と小気味良いリズム、眼前に立ち上ってくる鮮やかな場面描写など、舞台を創る劇作家ゆえの力量に圧倒された。狂気の笑いは、ここにある。
2013/02/12
優希
痛くて、熱い。朧げな輪郭が読み進めていくにつれ、熱を帯びて形が見えて来るだけでなく、体に突き刺さってくる世界観があります。登場人物たちの背景が迫るのみならず、焦点が変わることで語られるそれぞれの人物像が理想と現実を行き来するようでした。痛々しさと故郷を嫌う嫌悪感が強くぶつかってくる作品です。笑うこともできず、ただその熱量の中に体を投げ出してしまうような危険さがありました。魂が熱に飲まれていく感覚は嫌いではないです。
2016/07/13
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