グランド・フィナーレ (講談社文庫)
グランド・フィナーレ (講談社文庫) / 感想・レビュー
absinthe
前半と後半で印象がまるで変わる。前半はやや信頼できない語り手手法で裏切られ、かなりクズな印象を受ける主人公。後半はむしろ人を救おうと奮闘する頼りがいのある青年になる。主人公はどこか冷静な観察者で自分さえ他人事のように見る。主人公のロリコンも、どこまで本当の性癖なのか。どこかネットなどの情報に振り回され立ち位置を見失っていただけのようにも感じる。少女が大人の女性より素晴らしいなどの描写は無いのだ。後半、同様に情報に振り回された少女を救おうと試みる。終わりは唐突だが明るい未来を予感させる。
2021/09/02
ヴェネツィア
2004年下半期芥川賞受賞作。阿部和重は、これ以前に既に群像新人文学賞、野間文芸新人賞、伊藤整文学賞、毎日出版文化賞を受賞していた。もはや今さら新人の登龍門でもないような赫々たる受賞歴だ。文壇、あるいはむしろ出版界がこぞって待望する新しい文学の旗手といった位置づけである。阿部は本質的にストーリーテラー型の作家である。本編『グランド・フィナーレ』でも、そうした力量は存分に発揮されているだろう。しかし、主人公の抱える煩悶が表層的に過ぎるように思われる。日本版ナボコフたるには、あまりにも遠い階梯だ。
2013/07/24
yoshida
短編4作品収録。神町が登場し阿部和重さんの作品だなと感じる。標題作が最も読ませる。離婚し娘に会えぬ沢美。面会権も無いのは不思議と感じたが、離婚の真の原因が沢美の性癖にあり納得。東京から地元の神町に戻り、家業の文房具店を手伝う沢美。小学校の劇の指導を請負う沢美。「ニッポニア・ニッポン」で登場する少年の妹と友人から、2人の劇の指導を請負う。沢美の性癖から何か起きる不安を感じつつ読み進める。指導は平穏に進みつつ、2人が自死を考えていることを知った沢美は神町を彷徨する。芥川賞作品だが理解が薄い。読込みが必要かな。
2021/08/08
hit4papa
著者の作品の多くは、傍目から見て問題を抱えているのが明らかなイタいやつが主役です。内省するほどに、自己欺瞞に陥ってしまうというパターンが見られますが、本作品は幾分おとなし目でしょうか。ロリコンが発覚し、妻や娘に愛想をつかされ、友人たちからも蔑まれている男の物語です。出だしから波乱の予感ですが、二部構成の後半から様相が変わります。故郷に戻った男が小学生の女子に芝居を教えるようになるのです。破綻へむかってまっしぐらと思いきや、転調したかの如くで戸惑うばかり。キレイなまとめ方が薄気味悪さを感じます。【芥川賞】
2017/01/15
ω
いやいや。ちょっと隠居したくらいでそんなに変われるもん( ゚д゚)? 何が何でどうゆこと😹❓と思いつつ、おもろく読みましたw 経歴見ると色々賞とってる作家さんなので実力派なんだろけど、勧善懲悪以外の深い読みはできんかったな|・ω・`)。
2022/04/16
感想・レビューをもっと見る