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キルプの軍団 (講談社文庫)

キルプの軍団 (講談社文庫)

キルプの軍団 (講談社文庫)

作家
大江健三郎
出版社
講談社
発売日
2007-08-11
ISBN
9784062758086
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キルプの軍団 (講談社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

今回の物語の語り手は大江家の次男、高校2年生のオーちゃん。もちろん、フィクションである。ディケンズの『骨董屋』を「語り」の軸として物語りは展開してゆく。ディケンズのネルにあたる元サーカスの一輪車乗りの百恵さん、その彼女とは対極の世界にいるかのような革命党派「キルプの軍団」、そして図らずもその両者に関わることになったオーちゃん。これはオーちゃんのイニシエーションの物語だ。それは大いなる悲しみ(状況に対するものと、自身の少年への訣別)と慙愧の念とを伴っていた。しかも、それは燔祭までをも必要としたのだから。

2014/08/16

モリータ

◆'87-'88年『へるめす』連載、追加・完結の上改題して'88年刊。『懐かしい年への手紙』の直後。◆作家の次男「オーちゃん」の視点の物語。主人公は作家の弟で暴力犯刑事の「忠叔父さん」とディケンズの『骨董屋』を読み解き交流する中で、『骨董屋』を軸に『虐げられた人びと』やイブラヒムとイサクの話も引きながら映画を作ろうとする無垢な「百恵さん」と「原さん」一家に関わっていく。◆大江は新左翼の動きを横目で見、『河馬に噛まれる』連作のテーマともしている。その愚かさ・酷さを前提として、どう表現するか?次の端的な一文。

2021/08/01

seer78

ディケンズ『骨董屋』を原書で講読することから始まる物語はやがて主人公の高校生を奇妙な事件に巻き込む。四国から上京してきた叔父と、作家である父親。元サーカスの一輪車乗りの女性と、かつて学生運動で過激派イデオローグだったその夫。主人公は叔父の依頼により女性との連絡係を引き受けた結果、森の小屋での映画作りを手伝うことになる。そこに若い活動家たちのある企みがあるとも知らず…。小説を厳密に読むことがそのまま現実を作り出し、暴力的な世界に対峙することへと読者を誘う。くどい文体が特徴のこの作家にしては読みやすい作品。

2012/11/30

misty

ディケンズの『骨董屋』のテクストと、後半からドストエフスキーの『虐げられし人々』が物語の中心として直に出てくる、そんな長編。物語はちょっとお粗末で、大江の代表作ではないよなという感触だけど、ディケンズとドストエフスキーのテクストを執拗に絡めて進めていく物語進行は面白かった。おおむね明るいのも良い笑

2017/11/22

桜もち 太郎

高校三年生のオーちゃんの物語。オーちゃん家族は作者一家。平易な文章だが、かなり難しく感じた。実話から物語へ行ったり来たりと言う感じ。読んでいる途中から、あれ?もしかして活動家の物語?って思ったがやはりそうだった。学生運動当時の事を知らないので、深みを理解できなかったのは残念。ディケンズの「骨董屋」、読んでみようかな。オーちゃんのように原文では読めませんが。

2016/10/02

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