鏡の影 (講談社文庫 さ 99-1)
鏡の影 (講談社文庫 さ 99-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
16世紀初頭のドイツ。カトリック世界はゆらぎつつあった。そして、それは同時に、封建領主たちに支配されていた領主―農民といった構造のゆらぎでもあった。本書はそんな時代を選び、異端者として告発されるヨハネスを主人公に選んだ。スイスや北ドイツでは福音派―すなわちプロテスタントが台頭し、人々の価値観を大きくゆすぶっていた。物語としてはかなり地味で、そうした精神風土を踏まえないと、あまり楽しめないかも知れない。佐藤亜樹の史観の背後には宗教が見据えられており、これは正しい認識だろう。ただし、血沸き肉踊ることはないが。
2014/08/22
GaGa
巻末には宗教図像学者なる方の解説があり、帯にはキリスト教義を解明した話題の書などと書かれているので、それなりに構えて読み出したら、もう、これが面白い。難しいことなど考えずに読んだ方がいいです。ある意味上質なスラップスティックとも言えるのでは?それにしても、ここまで徹底した世界観を描ききることが出来るのはさすがです。
2011/02/22
いいほんさがそ@蔵書の再整理中【0.00%完了】
**キリスト教ミステリ**16世紀、宗教革命前夜。学僧ヨハネスは、キリスト教の命題について"ある疑問"に気付く。その思いに捉われ、探求の旅に出る彼だが、その道は長く険しい、己の業と向き合う、苦行の道程だった・・・(紹介文・他より)――素晴らしいキリスト教的ミステリ小説!メフィストフェレスと同じ台詞を口にする、なぞの青年が登場するなど、『ファウスト』を彷彿させるストーリー展開が秀逸!けして明るいハッピーエンドではないが、キリスト教を題材とした狂言回しの中では、類を見ない傑作だと思います!良書!
2013/09/20
skellig@topsy-turvy
つん、と指で突いたら「世界」の全てを変える事の出来る1点があるかもしれない―百姓の息子ヨハネスはそんな希望を胸に旅に出る。その途中でシュピーゲルグランツなる喰えない美少年が旅の仲間になり、領主に目つけられその可愛い妹にくらっときて百姓一揆の扇動者から異端の魔術師になって神学論争(詭弁戦争?)を戦って牢獄に入って女に溺れて…あれ?ヨハネス運命に翻弄され過ぎじゃないの?と思いきや…話としては地味な部類かもしれないけど、キリスト教と外国文学のような文体にふらふらっと来る人は楽しめると思う。
2015/12/14
ヨクト
宗教に疎いので難解でしたが、なぜかすらすらと読めちゃう不思議。キリスト教を背景にプロットされているんだろうけど、そこがぼくにはまだ理解できていないが、それでも面白かった。平野啓一郎「日蝕」との関係を初めて知った。
2016/05/15
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