そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫 か 112-1)
そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫 か 112-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者の小説デビュー前のブログ集。その時々の雑感が、連綿たる大阪弁で綴られている。ご本人も言うように「文章は読みづらく、意図もわや、なんですのんこれは」といった節がなくもないし、いわば玉石混淆の観を呈してもいるのだが、この人に内在するナイーヴな一面もまた垣間見せている。たとえば、「私はゴッホにゆうたりたい」などは、表現者の苦しみや孤独に強く深い共感性が寄せられている。また「尻が痒い、それ以上も以下もなく」では、ディズニーランドでの狂奔の中で、それとは正反対の位置にいる小学生の女の子を思っていたりもするのだ。
2013/07/05
風眠
まだ職業作家になる前、歌をうたっていた頃の文章。日記だけれども、気持ちとか感情とか、そういう心の中の熱量がぎゅうと圧縮されて、文字に全部注入されています、というくらい迫力のある一冊。かと言って、暑苦しいわけでもなく、どこか古風で、でも今どき感もあって、力強くて圧倒される文体。ものすごくレベルの高い思考をしているのに、大阪弁なところも親しみがわく。結論を言えば、ものすごくいい、大好き、感動。作家になる前から、川上未映子は川上未映子だったんだなって、なるべくしてなったんだなって、私に確信をくれた処女エッセイ。
2020/01/24
うりぼう
みえちゃんの頭がでかいのが、よく解かりました。世界も楽々入るでしょうという感じ。読むの時間がかかった。読みながら、ふと遠くを眺めて反芻することしばし。思いのまま、自由奔放、ブログやな~感が満載。彼女のバイオリズムを見るような時間軸で、1本の長さも質も千差万別、自由奔放。自分がいない方がいいと思ったトラウマが「純粋悲性批判」となる。自己を無にすることから、あらゆもの、音、色に奥深くでつながり、「バナナブレッド・・・」で覚醒し、描く。「早川義夫は犬だった」が、ページの切りで終わりと思うが、次ページの答が秀逸。
2010/10/21
hiro
未映子さんの結婚祝いということで、小説を書く前のデビュー随筆集の『そらすこん』を読みました。Web掲載のものだけあって、週刊誌掲載の『夏の入り口、模様の出口』と比べると、めっさ関西弁やし、句読点が独特なあの読みにくい文体もあり、詩もあり、内容も自由で、『乳と卵』にでてくる場面が、未映子さんの実体験がもとになっていることがわかったり、 ミュージシャン未映子さんが見えたり、家族(特にイズミヤで働くでおかあさん)思いがわかり、生の未映子さんが見える本でした。母未映子の小説、エッセイも今から期待しています。
2011/12/10
とら
川上未映子のデビュー随筆集―デビュー随筆集!?という不思議な響きにまず驚き。でもやはりこれは一概に随筆とは言えないのであって、まあ一番近いのは「日記」であるが、時折匂わせる文学の香りがそれを惑わす。もう圧倒的。仮に随筆と言う括りに入れるのだとしたら前に読んだ「ぜんぶの後~」より格段に面白いと断言。川上さんの思考回路の不思議。鍋を友達と囲ってる時に急に死ぬまで人生は続くということにぞっとし、パレードを見ながらテレビで見た生活保護もらって父親の面倒見ながら犬と暮らしてる小三女子の事を考える。天才なのだろうか。
2014/01/15
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