ミステリアスセッティング (講談社文庫 あ 86-4)
ミステリアスセッティング (講談社文庫 あ 86-4) / 感想・レビュー
Y2K☮
前半は息苦しいけど読み易いドキュメント、後半は「キャプテンサンダーボルト」にも運用された加速系サスペンス。吟遊詩人に憧れるも、客観的には音痴な故に歌う事を己に禁じたシオリ。ただ自由に歌いたいだけなのに恋人や友人、家族にすら迫害される。誰もが彼女の言葉や行動を都合よく解釈して弄ぶ。まるでワイルドの「幸福な王子」。携帯型の核爆弾は「インディヴィジュアル・プロジェクション」にも出て来たし、実在事件とのリンクも著者の十八番。さすがの面白さ。救いのなさが救いという金原ひとみの解説にも一理あるが、もう一つ光が欲しい。
2015/04/08
ちぇけら
これは絶望の物語であり、希望の物語でもある。シオリは、吟遊詩人になりたいと思いながらも、極度の音痴で歌うことを禁じられ、周りの人々にその純粋さ故につけこまれ、自ら罪を感じ自らに罰を課し、それでも運命はまだシオリに試練を与える。スーツケース型核爆弾を渡されたシオリは、東京の地下に潜っていく……。シオリの絶望の人生が語られ、ラストは地下=内面に潜っていくという捉え方ができるのだろう。しかしシオリが歌うことのできなかった歌が、Zによって語られた希望の物語だと思って、ぼくは本を閉じた。
2017/05/24
NAOAMI
唄うことが大好きで吟遊詩人になることを夢見るシオリ。でも彼女の唄う能力は絶望的な音痴。自身がそれに気づく気づかされる過程が面白い。コレは何の話だ?公園で学校を退職した爺さんが話している物語としては、長いぞ、これ長すぎるだろ。最後の最後に公園に話が戻り、爺さんとシオリの関係もわかるのだが。読ませる力、引き込む力がすごくて一気読みしてしまった。他人を見る目がなく、うまく他人と付き合えないシオリの苦労ばかりの人生を読んでいると、そこになんで「謎のポルトガル人」が出てこにゃいかんの?とにかく彼女が痛すぎるのだ。
2014/12/30
葵
こ、これ、ものすごい力技で感動のラストをでっちあげていないか!?前半はおとぎ話のようなふわふわした空気が漂っているのに、突然のスーツケース型核爆弾登場に思わず笑ってしまう。逆にこれもファンタジーの世界観?主人公は早見和真のイノセントデイズを彷彿させる。他人に人生の舵を任せ流されるように生きて、過去から学習せず最悪の事態が起きそうでもなお「自己犠牲」という形で状況を変える努力をせず自滅する。それであなたの魂は昇華させられるんですか?腹立たしいのに読む手は止まらない。阿部和重…なんなんだ…。次買いました笑
2024/06/13
阿部義彦
近未来SFと言ってよいのかな。かなり荒唐無稽な話ではあります。主人公の取るべき最後の行動は読んでるうちにこれしかないと判るし事実その通りにはなりますが、その、語られ方にひとひねりあって、成程こんな話即興では作れないよな、実際に有って直接彼女とメールをしたからこそなんだろうなと納得させられますね。本文では、遥か昔とか書かれてませんが、東京タワーが営業中とあるので2000年前後?と言うことはやはりフィクションなのか?そこはまあ些細なことで一つの寓話としてよく出来てますね見事です金原ひとみさんの解説も良かった。
2015/11/05
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