わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫 か 112-2)
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫 か 112-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
137回(2007年上半期)芥川賞候補作。選考にあたったファースト・リーダーたちは驚いたことだろう。何人かは、新しい文学の到来を確信もしたはずだ。破壊的なまでのスピード感に満ちた文体。しかも、それが奇妙な飛躍とネジレを起こし、しばしば停滞もする。その感じは西脇順三郎の詩に幾分か似ているように思う。ただ、妄想独白体の部分は文句なくいいのだが、青木と女が登場する対話場面は日常に回帰してしまうようで残念だ。また、エンディングの「幼女が…」からは不要だ。「一瞬だけのこの世界、思う、それ」で終わるべきだっただろう。
2013/01/14
ダイスケ
頭の中で内容の整理がつかなくて、特に自分が読んでいる場面は「わたし」の現実なのか、妄想なのかが整理できなかったのです。そのため、上手く感想を書けないです。大阪弁の文章はリズミカルで楽しかったのですが…
2023/05/21
新地学@児童書病発動中
なんといっても表題作が傑作。最初はわけが分からず、何だこの小説と思いながら読んでいったら、結末で圧倒的な感動が待ち受けていた。歯で考えるとは滅茶苦茶なようだが、この主人公のことを考えると理解できる気がする。他の作品でも感じたことだが川上さんは哲学的ことが好きらしく、この作品でも読者に対して重たいを問いを投げかける。その投げ方が日本文学の名作にオマージュを捧げながらというところが心憎い。
2013/12/01
hiro
未映子さんエッセイを含め4冊目。相変わらず難解な文体と関西弁。『乳と卵』も句点が出てこない独特の文体で読みにくかったが、関西人なので関西弁は苦にならず、内容は理解できた。しかし、『わたくし率』は、主人公の幻想と現実の境目がよくわからず、まだお腹にもいない子供に対する時系列がおかしい日記に惑わされ、理解不能だった。『感じる専門家』は、大阪の漫才を観ているようだった。でも、これに負けず、『ヘブン』や『すべて真夜中の恋人たち』を読んでみようと思う。そして映画『パンドラの匣』も。
2011/12/26
ナマアタタカイカタタタキキ
あ歯歯、これは滅茶苦茶な滅茶苦茶。全くもってわたくし率100パーセントである。そしてあの『雪国』の冒頭はそのパーセンテージを限りなくゼロに近いものに変える効力を持つのだという。〈国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた〉の国境は、コッキョーではなくクニザカイと読むのでは?というような議論があるのだそうだ。そんなん知らん。歯科の治療室を口内、椅子を舌に見立てているのが何でか私の気に入って、さらにその口内で口内を弄くり回される構図が、とても精神的でセクシャルであるかのようで、個人的で一回きりでなんかたまらん。
2020/09/25
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