沈底魚 (講談社文庫 そ 8-1)
沈底魚 (講談社文庫 そ 8-1) / 感想・レビュー
しんたろー
曽根さんが『鼻』と同時期に書いて乱歩賞を獲ったという事で期待し過ぎたのか「これが受賞作?」と拍子抜け。ハードボイルド風は悪くないが、主人公の不破を始め、公安刑事に違和感を感じる。それは刑事部との差異が明確に描かれていないからだろう。また、ターゲットになる大物議員が一度も登場せずに終わるので、後説明だけでは納得度が低い。「スパイは誰?」という謎で巧く引っ張って飽きさせない工夫はしているが、登場人物たちの魅力に乏しいのも残念。標準以上の作品ではあるが、自分勝手に期待のハードルを上げてはいけないと改めて思った。
2021/03/24
みも
江戸川乱歩賞受賞作。その栄誉に違わぬ秀作である。通底するのは警察公安内部の確執と抗争。一匹狼的な主人公の刑事と、取り巻きを従え派閥の親分的地位に鎮座する剣呑な刑事。そこに警察庁から派遣された女性キャリア理事官が絡み、一気にスパイ小説の様相を呈してくる。事態は二転三転し虚実混交で帰着点が見えず、最後までスリリングでエキサイティングだった。政治家や中国工作員も絡み、そのスケール感や世界観は日本の小説としては稀有なものに感じます。その意味ではル・カレ作品を彷彿とさせ、リーダビリティの高さも本著の魅力の一つです。
2024/04/02
nobby
久々のスパイ小説、楽しんでの一気読み♪「中国スパイが現職国会議員に埋もれている」出処あやしく明かされた情報。そこから浮かびあがる懐疑は次期総理とめされる若手エリートだった。その正体を追いながら、次々と登場する人物をスパイと疑う様子、次第に近場でも誰が味方で、はたまたどっち側かを満喫!大学時代に落合信彦に傾倒して、スパイの研究で卒論書いた自分は黒幕はビンゴ(笑)個人的にCIAやKGBが舞台の方がゾクゾクするのはご愛嬌♪最後もう一捻り期待したけど、それではやり過ぎかな…
2016/11/14
射手座の天使あきちゃん
結構な緊迫感、さすが乱歩賞作品! 日本、中国、アメリカをも巻き込んだ壮大なスパイ小説、でもストーリーが二転三転、新たな展開が次々と… うーん、メモ片手にしないと一度では頭に入りませんでした、面目ない!! <(^_^;
2011/01/17
みっちゃん
乱歩賞だから当然なのだが既読の【鼻】【あげくの果て】との作風の違いにやっぱり驚いた。日米中3国入り乱れての情報戦。中国名とコードネームが後から後から頻発して混乱ぎみの処に、二転三転、いや四転、もう誰が敵か味方かわからねえよ!の最後まで息もつかせぬ展開に置いてかれないように必死でついていった。全力疾走して息切れ状態の私に何だか爽快な気分になるラストは、作者からのご褒美みたいに感じた。
2015/01/22
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