言い寄る (講談社文庫 た 2-44)
言い寄る (講談社文庫 た 2-44) / 感想・レビュー
遥かなる想い
デザイナー乃里子を主人公とする 軽快な恋の物語である。 剛、水野に 言い寄る 乃里子の視線は、 正直で 気持ち良い。 心のあり様が 31歳らしく 潔く、 生ぐさくないのが 良いのだが …五郎のことを 想いながら、 終電で帰られてしまう乃里子… 地団駄踏むような悔しさが よく描かれてはいるが…最後は 剛、水野に 流されていく 乃里子の心が 少し哀しい、 恋のお話だった。
2018/11/07
しいたけ
ああ、関西弁で感想を書けないことが、心底悔しく情けない。東京弁では何としても足りないのだ。私よりずっと上の本物の昭和の恋愛小説。中心で愛を叫ばないし、死んだ親友の恋人とも付き合わないし膵臓を食べたいとも思わないけど、面白くてたまらないけど、何故か切なさが的のド真ん中の黒丸を射抜く。ああ、関西弁で口説かれたくてたまらない。叶わぬ夢だということも、心底悔しく情けない。
2017/05/20
優希
面白かったです。ふわりと揺れる乃里子の恋心と、彼女をとりまく男性たちの微妙な関係が妙にリアルでした。様々な男性に言い寄られ、恋も仕事も楽しんでいる乃里子だけれど、本当に想いを寄せている五郎には言い寄れないのが恋する乙女という感じで可愛らしかったです。好きな人とは距離ができ、「合う」程度の人とは気楽に付き合える。とても複雑なのですが、何故かスッと受け入れられてしまいます。好きな人の姿を見るだけでときめいたりするところはやはり純粋なんですね。もどかしいけれど心地よい。この続きも気になります。
2016/04/27
ゴンゾウ@新潮部
不思議と読む機会がなかった田辺聖子さん、初読です。40年以上も前の作品だととても思えない。3人の男性の間で揺れる乃里子。奔放に性を謳歌するように見えるが本命の五郎には言い寄れない。その反動で他のふたりと情事を繰り返すのか。そんな女心が赤裸々に関西弁で描かれていて切ない。特に終盤は乃里子がいじらしくて愛おしく思えてしまう。
2017/06/10
mukimi
最近男性作家の歴史小説の良さに目覚めたけれど、女流作家の恋愛小説は何にも変えがたい。深夜にガールズトークをしてる様な、でも本当に女子会なんかで口にしてしまったら白い目で見られかねない危うい感情。頭では分かってるのに心と体が別の動きをしてもどかしくて寂しくて。男が寄越した遣る瀬無さは、男で埋める。そのやり場の無い思いは誰かと共有できるものじゃないって殆どの女は知ってる。だけど筆者は見事に共有させてくれた。「彼をたのしみたい」「とっても愉しいこと」「軽侮のこもった愛情」突飛な語彙ではないのに心に響いて残った。
2019/04/29
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