私的生活 (講談社文庫 た 2-45)
私的生活 (講談社文庫 た 2-45) / 感想・レビュー
しいたけ
若いとき、田辺聖子を読んでいるはずである。この本とて、もしかしたら再読かもしれない。はっきりしているのは、この本の面白さが、若い私には、いや若い女には到底わからないものだろうということだ。『言い寄る』でラブロマンスを書き始めたつもりが、『私的生活』で「愛の苦瓜」になってしまったと言うお聖さん。男と女の、優しさの演技とプライドのシーソー。愛した男を空を背景に見上げる切なさ。捧げる愛を経験した女でなければ、この苦味を味わえない。歳を重ねることの幸せを思う。この本に心底感動できるのだから。
2017/05/24
じいじ
神戸高台に建つ豪華マンションに魅せられて「結婚しよう!」と言ってしまった主人公31歳。自己分析では「美人ではないが魅力はある」。性格は、男をなめてる生意気な女。だけど憎めない。女が決めた男は、金があって色男で健康的。好色で遊びにも長けている。すべて恵まれた毎日―或る日、冷静になって女は考える、未来のことを。何か物足りないと。著者曰く「男と女は、考えれば考えるほど、一緒にいるのが難しい種族」。それでも男も女も結婚したがり、結婚する。読み終えて、改めて結婚って何だ? 夫婦の関係って何だ?を考えさせられた。
2018/03/18
優希
面白かったです。乃里子は結局剛と結婚したのかとしみじみ。年下の罪罰御曹司の求婚に負けてしまったのでしょうか。贅沢で幸せに思えた暮らしも3年の年月の中で乃里子の心が変化していくのがリアルでした。自分にはお金持ちは性に合わないこと、生活の不一致、そんなことを感じ始めたのでしょうね。剛への優しさは畏怖心から来るものだとしたら、やっぱり息苦しくなると思います。自分が追いつめられるような結婚生活はしたくないと思いました。別居をしたことで手にした私的生活。中杉さんとの今後の関係が気になります。
2016/04/30
mukimi
鏡の前で裸になり今までで一番綺麗、と思う乃里子、百戦錬磨の色男にべた惚れされる乃里子、高価な宝石を贅沢に着飾る乃里子。とても共感し難い女に思えるのに、乃里子のやんちゃで自由な内面には悉く惹かれた。女子ならばみんな持ってたけど年を重ねて心の隅に押し込まれていく誇りと自由を乃里子は思い出させてくれる。自分と家を綺麗にして夫の帰りを従順に待つ乃里子より、渇望や欲求不満や、折々の僥倖のような男達との恋に悶える独身乃里子の方が魅力的に思えた私の婚期はいつになるのやら。3作目は離婚後。乃里子の本領発揮してほしい。
2019/05/18
yui
乃里子三部作の2作目。前作はロマンス要素が強かったですが、今回は乃里子が結婚生活で満たされているはずなのに、夫に吸収されて自身の存在がなくなってしまったと感じてしまうという内容なので、少々苦味がありました。気さくなおじさま・中杉氏が魅力的に見えるのもなんかわかる気がしました。大人の余裕、乃里子に幸あれ。
2016/02/23
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