佳人の奇遇 (講談社文庫 し 33-5)
佳人の奇遇 (講談社文庫 し 33-5) / 感想・レビュー
さっとる◎
ブザーが鳴って明かりが消える。幕が開く前の高揚感は代替不可能。とびっきりのドラマは舞台上でも裏でも客席でも絶賛開演中。ただ一度きりの人生はずっとぶっつけ本番だから、泣いたり笑ったり忙しい。気分はso highとtoo lowを行き来して、歌うアリアは短調長調何でもござれ、変拍子はもはや変態の域。こんなたいへんな出し物に練習がないなんて。ステージは現在進行形のing。体内ティンパニ鳴らす何処何処何処何処、出番は待ってくれない。目をとじる。明かりが消える。幕なんて開きっぱだ。最高の歌が最高の奇跡を連れてくる。
2020/02/24
たくのみ
歌手、楽団、マエストロ、様々な才能が集まって織りなされるオペラ。ドンジョバンニのストーリーと曲に合わせ、踊るように展開する4つのストーリー。OL晴香がビビッときた「ふくらはぎ」萌えの法政大学の講師が、実はおさななじみのお兄さん。ホームレス道に入るため散財する植島さんは、「ニッチを探して」の道長さんのよう。テノール馬鹿のナルシスト・アンドレ。マネージャーとして格闘するまどか。どの人物も魅力的。 ハイソな感じで敷居の高いオペラだけど、読めば一度行きたくなるはず。
2016/01/22
かず
面白かった。群像劇。馴染みをあまり感じないテーマだけどそれでも楽しめた。地震のニュースばかりで気が滅入る時に読むのに向いている本だった。地震のことから目を逸らすという意味ではなく。
2011/03/16
どみ
モーツァルトのオペラ『ドン ジョヴァンニ』の公演を迎えるコンサートホールを中心に、様々な登場人物の人生や過去や未来や瞬間が描かれる。短いプロットでどんどん新しい話が展開するので、置いていかれないようについていくしかないところがまた上手い書き方だなぁと思わされる。
2015/08/18
味読太郎
一気に読み終えました。登場する人、それぞれの生活、思惑の数だけ一つのコンサートの舞台を彩る役者やホールに響く音は全く違う。"奇遇"なことに僕の頭の中にもさまざまな境遇の観客に対して、表現者がショウタイムをする、というような発想があった。島田雅彦さんの文書は個人的に好きだなと思える作品でした。洒落がきいていて流れるようです。
2014/03/13
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