新装版 ROMMY 越境者の夢 (講談社文庫 う 23-15)
新装版 ROMMY 越境者の夢 (講談社文庫 う 23-15) / 感想・レビュー
ナルピーチ
人気歌手・ROMMYがスタジオ内で絞殺死体となって発見される。容疑者が限定されている中、その死体がバラバラにされてしまう。強行に及んだ犯人の不可解な行動の謎。その真意とは…。この小説はROMMYの生涯を描き、人間の欲深さと愛情を謳った群像劇の様にも読み解ける。ミステリーとしても伏線の張り方が素晴らしく見事なまでに読者に勝手な思い込みを植え付け、最後になってガラガラと瓦解させる手法はさすが。最後の展開は完全に予想外。何より“ROMMY”と言う一人の歌手が創り上げる幻想の世界に最後まで魅了されっぱなしだった。
2024/06/30
セウテス
ミステリーには違いないが、「葉桜の~」と同じ着目点で描かれた印象を受ける。レコーディングスタジオの控え室で、歌手Rommyが絞殺されて見つかる。音楽業界の都合から警察への通報を渋っている間に、なんと遺体が切断され胴体部分が無くなってしまう。殺害犯は誰なのか、何故胴体部分を持っていったのか。写真やデザイン画など様々な方法で、現実の様に描いている事に驚きます。本作の特徴は殺害犯は解るが、体をばらした理由についてどんでん返しがあるという、殺害意外の点に重点を置いている事であり、好みの分かれる所で有ると思います。
2016/04/20
すたこ
★★★★★すごかった。ミステリーとしてよりも、一つの物語として。圧倒的な読み応え。ROMMYという歌手の半生、20年前だからこそ書かれた作品、そこに重きを置くと色々と考えさせられる。間に挟まれるイラストや写真からリアリティーが出て世界感も広がり、飽きることなく読めた。途中の1行の衝撃から犯人がわかり、そこから驚きの展開に振り回される。そして深く切ないテーマにたどり着き、悲しくもあり感動もした。いつかまた再読したい。
2015/08/05
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
単行本でのサブタイトルは「そして歌声が残った」ラストシーンを踏まえると胸が苦しくなります。作中に一流のエンターテイナーとは、観客が痒いと感じているところのすぐ近くを掻き続けて観客を離さない、あるいははるか離れたところを掻いて新しい満足を与える、といった表現がありましたが、歌野さんは後者であり間違いなく一流のエンターテイナーです。少し前の時代を描いたもののようで、トリックや心情などもその時代に合わせた印象を受けました。良作です。
2018/01/15
koma-inu
天才歌姫ROMMYに関する、切なく美しいヒストリーミステリ。レコーディング前にバラバラ死体にされたROMMY、犯人はスタッフの誰か?なぜバラバラにしたか?歌野さんらしい、全編に張り巡らされた伏線。メイントリックは、社会背景も考えて、当時は珍しかったのかも。驚きは少なかったけど、ROMMYの歌詞やメイク、主張など、生き方が心に刻まれる。楽曲作りを目指す方が読むと、さらに思い入れできるのではないでしょうか。現代へ問いかける幕引きもgoodでした。
2024/11/11
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