新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫 や 16-9)
新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫 や 16-9) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
解説を読むと、ムーミンの一連のシリーズの中では、本書がごく初期に書かれたものということである。しかも、お話よりも絵が先に描かれたらしい。たしかに、ムーミンと聞いて多くの人がまず最初に思い浮かべるのは、プロットや物語の内容ではなくて、あの独特の味わいのある絵だろう。ムーミン一家をはじめとして、スナフキンから果てはニョロニョロにいたるまでファンも多い。また、キャラクターとしてだけではなく、影を伴った風景は一層に抒情的だ。絵本ではないのだが、挿絵がなければ成り立たないくらいに一体化しているということなのだろう。
2012/12/26
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
「彗星って、ほんとにひとりぼっちで、さびしいだろうなあ……」「うん、そうだよ。人間も、みんなにこわがられるようになると、あんなに、ひとりぼっちになってしまうのさ」 彗星をずっとどんなにかこわがっているのに、その気持ちになって思いやるムーミンのやさしさも、それを自分の身に置き換えるスナフキンの洞察力も好き。「どんなことがあっても、あんたがこわがらないあいだは、わたしもこわくないの」と言うおじょうさんの愛もかわいい。非日常なことがあって絶望してもどこかのんびり地に足ついてるムーミン一家やっぱり大好き。
2020/02/06
ユメ
この本の始まり方が好きだ。冒頭、スニフが「こわそうなひみつの道を見つけた」と誘う。それに対しムーミントロールは「サンドイッチをもっていかなくちゃ」と応じ、ママは「そりゃいいわね」と送り出してくれる。この鷹揚さが良いなぁと思う。その後、彼らは、スナフキンやスノークたちを始めとした、沢山の生きものに出会うことになる。ムーミンたちは、優しいだけではない。意地悪を言うことだってある。けれど彼らは、自分とは異なる生きものが存在するのを当然のこととして受け入れている。それが、ムーミン童話が居心地良い理由の一つだろう。
2015/03/28
アキ
これが書かれた1948年のフィンランドはまだ戦争の爪痕が町に残っていた。この彗星はソ連という大きな戦争の相手国だったのかもしれない。すべてを焼き尽くす真っ赤な彗星は、小さきものたちをすべて破壊するようにみえたが、洞窟に逃れたムーミントロールの仲間たちは彗星が去った後に平穏な日々を取り戻す。彗星が迫る中、切手に固執するヘムルやノートに対策を記すスノーク、直前までケーキを焼くムーミンパパとママ、ムーミン谷に戻るムーミントロール、ねこを追いかけるスニフ、ハーモニカを吹くスナフキン。著者が何度も加筆した第1作。
2022/09/03
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
誰かがテントの中でハーモニカをふいている音が、きこえてきました。(中略) テントからは一ぴきのムムリクがあらわれました。緑色の古ぼけたぼうしをかぶって、パイプをくわえています。……こんな風にスナフキンがムーミンの物語に初登場したのが本書。長い尾を引いた彗星が地球に近づいてきて、ムーミン谷は大騒ぎ。彗星の様子を探るため、ムーミントロールはスニフを連れて、遠くの天文台に向かいます。途中でスノークのお嬢さんと出会い、皆でムーミン谷に帰ります。刻々と迫る彗星。幻の処女作『大きな洪水』に続くシリーズ第二作。
2014/09/20
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