小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫 や 16-17)
小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫 や 16-17) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
ムーミンシリーズの隠れた第1作目として有名な(なのでもはや隠れてないけど)1冊。前から気になっていたけど、実際に読んだのはどうやら初めて。他のシリーズに比べて話も短く、絵のタッチやムーミンのフォルムもいかにも原石な感じで、ファンにはたまりません。ちいさな生きものたちが、どこまでも相手に優しく、礼儀正しく、受けた親切を別のひとに返しながら進んでいくようなお話にほっこりと心があたたまる。「人だすけは、えらく気もちのいいものですな」こんな風に、自分のために人だすけできるような人でいたい。
2019/03/01
新地学@児童書病発動中
ムーミンシリーズの第一作目。戦争中に書かれたそうで、物語のあちらこちらに戦争の暗い影を感じる。ムーミントロールとママが旅に出て、いろいろな冒険するプロットはスリリングで、楽しめるものだった。個性的な登場人物も面白くて、特にチューリップから生まれたチューリッパは忘れがたい印象を残す。一番良かったのはヤンソンの絵。ユーモラスな雰囲気の中に北欧特有の哀感が漂っていて、非常に私の好みだった。
2014/11/24
はっせー
ムーミン好きな人やファンタジー好きな人にぜひ読んでほしい本になっている!ムーミン。あのかわいい白い存在。そのムーミンの小説になる。ムーミンシリーズは当初8作しかないと思われていた。だが実は9作あった。この本はその幻の第一作目に当たる。第一作目のためおなじみのスナフキンなどのキャラは出てこない。それだけではなく書かれたのが戦時中の1939年のため絵が少し怖く見える。当時の戦争の影響だとあとがきにも書かれていた。そんなムーミンの始まりを知ることによってより一層ムーミンを楽しめると感じた!
2023/01/25
ユメ
印象的な場面がある。冬眠する家を探す旅の途中、ムーミントロールたちはお菓子でできた魔法の庭に辿り着く。しかし、喜んだのも束の間、一行はそこで調子を崩してしまい、早々に楽園を立ち去る。快楽よりも、あたたかいお日さまの光と「ちゃんとした」食べ物、そして家族を求めるその姿は、この世界に登場するムーミントロールを始めとした小さな生きものたちの、根っこにある善良さを象徴しているように思う。彼らの願いは、戦時中にこの物語を書き始めたトーベの、平和への渇望の投影なのかな。短いながらも、幾つもの幸せを萌芽させてゆく物語。
2015/03/26
ミエル
ムーミンシリーズの礎的作品、短いお話。ドライなママの台詞と行動が、成熟したフィンランドの大人の態度そのままで良い。不必要に子供に媚びる事もないし、小さな大人として接する感覚に国民性、時代性が見えるのがおもしろい。可愛らしくて情感豊かなアニメのムーミンに馴染んだ人にはわりと衝撃かも。アニメは成長期のお子様向けに品行方正さが重要だからしょうがないけど。やはり、捻くれた大人にはこのビターな世界観の方がおすすめ。
2018/12/14
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