ラジ&ピース (講談社文庫 い 113-5)
ラジ&ピース (講談社文庫 い 113-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
絲山秋子さんといえば、「他者性の文学」だ。そして、作家である彼女にとって、それは自己の内なる"他者"を発見し、パラレルワールドのごとく社会に解き放つ行為に他ならないのだろう。今回も小説の舞台は、作家の住む高崎。自らの故郷ではないだけに、しがらみもなく突き放した書き方だ。しかし、十分な愛着もまた持っている。そして、前橋と対比して見せたりもする。主人公の野枝もまたなかなかに魅力的だし、いつもながらの確かなリアリティを持つ。読者にとってもまた、全的には共感するわけではないが、なにかいとおしくもなる他者なのだ。
2014/06/12
しんごろ
地方のFM局の女性パーソナリティの話と短編が一編!『ラジ&ピース』はコンプレックスを抱き、野枝(のえ)の孤独感や一匹狼的な気持ちは、自分もいろいろコンプレックスを抱えてるから、なんとなくわかるなあ。でも好きなことを仕事にしているのは羨ましい。ちょっとずつ孤独から解放される野枝の姿に頑張れと応援したくなりました!短編『うつくすま ふぐすま』絲山秋子さんどうした?というような、やや過激で辛口の中にキレと明るさがあり、妙に納得をさせられ面白かったです。表題作よりこっちの作品が好きかな(^^)
2017/11/03
けい
女性を主人公とした2編の物語で構成されています。絲山さんらしい人物像で描きこまれる女性達。表題作はFMでパーソナリティーを務める野枝は仙台から群馬のFM局に移籍する。そこで出会って行く様々な人々、やがて気付いていくラジオのリスナーの気持ちと自身の存在。そして着実に変化する彼女の心が読んでいて心地よかった。「うつくすま ふぐすま」は痛快な主人公の物の考え方に唖然としながらも非常に魅力を感じた。爽やかな風の様な2編の物語でした。
2014/03/14
なる
FMラジオ局のアナウンサーとして群馬にやってきた野枝は意図的に他人との接触を持とうとせずに距離をとろうとする。自ら嫌われようとしているような文体が不思議な感覚だった。自己を守ろうとしているのかもしれない。突如として踏み込んでくる沢音の存在がとても心地良く、次第に群馬に馴染んで行く中で、ヘビーリスナーとの交流が奇妙なストーリー性を生み出すのだけれど、なんか、嫌われようとしているようなのに、嫌いになれない。なんとなく「好き」。そんな読後感になる。好きなミュージシャンが多数あつかわれていてそれも好感。
2021/03/05
キムチ
女なら大半が一生に一回は持つコンプレックス!・・どうせ私はブス、もてない。その彼女、出身は東京、仙台のアナウンスの仕事を離れ、高崎へ。色々あるんだわ…でも仕事は「明るく元気にマイクに向かいメッセージを『飛ばす』日々」しかし、実はリスナーが彼女の足元に集まってきているのだ。その気づきの過程が素朴(御免なさい)な方言が飛び交う会話でぬくもりの世界へポツンポツン・・繋がっていく。人からすると些細なことだろうけれどこういった世界を描く絲山作品は毎度ながら贅肉がなく、シンプル。それでいてあぁ~わかるっていう感触。
2015/06/22
感想・レビューをもっと見る