この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫 し 94-1)
この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫 し 94-1) / 感想・レビュー
遥かなる想い
本作品で山本周五郎賞を受賞。初期の白石一文の文章にあった、研ぎ澄まされたような文章はなく、ややくどい私見が気になる上巻だった。設定はある程度の成功を収めた主人公が、女性との出会いによって変わっていくという白石一文お決まりの物語だが、女性の名前をカタカナで表記するのはやめて 欲しかった。感情移入が難しい。
2012/02/05
chimako
フリードマンって誰?……まずはそこから。経済学には全く縁がないが頭に来るような引用やイライラするような言葉が山盛りだった。主人公はかなり恵まれた年収と社会的地位の編集者。癌を患い様々なものの考え方が変わる。例えば性に関することも。カウンセラーに長々と喋り続ける生死感は作者の考えなのだろうか。社会に対する憤りや自分自身に対する諦めが現れては沈み、また違う言葉で浮き上がってくる。全体の感想は下巻で。
2017/01/19
あすなろ
自分の人生に対する暗黙の信頼・当然の期待が一瞬で消えた。がん告知を受けた主人公の思い。そして、世を斬り取るかのような引用多い上巻。そして亡くなった息子の啓示ともいえる時折の囁き。さて、これを白石氏はどう展開させて結論付けていくのか、読み手が戸惑う上巻であった。
2020/05/31
ω
まずはこのタイトルω。カッコよすぎて不安になるけれど、ページをめくれば、白石先生ファンなら「これはイケる!」と思うに違いない。下巻へ続くのが嬉すぃ。どんどんいこう(ΦωΦ)
2022/07/16
かみぶくろ
相変わらず白石一文はサイコーだ。臆面もなくこういうタイトルを付けちゃうところがたまらない。雪景色から始まる物語の中で主人公と作者はしんしんと考え続ける。ただもうひたすらに悩み続ける。我々が意図的に見てこなかったものを、無関心の残酷を、世界の歪みと不条理を、ご丁寧にほじくり返してくれる。マクロとミクロの両面で。我々と地続きの言葉を駆使して。悩める超敏腕インテリを通じて貧困の痛苦を語る逆説。その設定に、筆者の所詮自分は当事者にはなり得ないという問題意識がかいまみえて、またひとつこの人の本が好きになる。
2014/11/22
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