富子すきすき (講談社文庫 う 44-8)
富子すきすき (講談社文庫 う 44-8) / 感想・レビュー
じいじ
やっぱり好いですねぇ、宇江佐作品は期待を裏切りません。江戸の女たちの人生を紡いだ6つの話。どれも情趣に富んだ傑作です。吉原廓の売っ子花魁、意気地が身上の深川・辰巳芸者…など、ひた向きな女たちを著者は見事に描いています。表題作は、ご存じ「忠臣蔵」赤穂四十七士の敵役・吉良上野介の妻を主人公に、吉良サイドから描いたユニークな物語です。三歳年上の気丈な妻。「富子すきすき」は、嫁して間もない頃、上野介が閨で富子の耳元で囁いた言葉だそうです。何とも微笑ましいではありませんか…。今が読み時、お薦めの一冊です。
2018/11/15
優希
6人の江戸の女性たちを主人公にした短編集です。女性ならではの視点で人生の悲喜こもごもが描かれていて、心に沁みました。表題作は異色の忠臣蔵という感じでした。吉良上野介の妻に見えていた「松の廊下事件」は今までの通説の忠臣蔵とは違って物悲しさを漂わせています。どの話もあっさりとしているけれどほろ苦い終わり方が印象的でした。
2016/02/16
ふじさん
古着屋で売られていた「俵藤太の百足退治」を描いた柄の帯を手にした娘たちの波乱の人生を描いた「藤太の帯」、赤穂浪士たちに討たれた吉良上野介の妻富子の妻として、母としての苦悩の人生を史実に基づいて描いた表題作「富子すきすき」、恵まれない境遇の幼馴染の男女の悲しい恋の顛末を描いた「堀留の家」等6編の趣きの異なる作品、どれも読みごたえ十分で、思いのままにならない人生に翻弄される人々を温かい眼差しで描いた作品。
2021/03/09
のり
6話からなる短編集だが、流石「宇江佐」さん。切なくもあり、甘味漂い濃密な哀愁を振り撒く人達。時代は違えど、心持ちは現代も同じ。縛りが多々ある事で歯痒く、焦りや憔悴も随所に滲みでてくる。「堀留の家」と「面影ほろり」が特にお気に入り。😄
2019/03/23
shizuka
忠臣蔵。物心ついた時からあの話に馴染んでるから、なんの疑いもなく浅野内匠頭イエーイ!上野介Booという構図に慣らされてしまっていた自分がこわい。吉良家からしてみたらただの災難。内匠頭は激情型だったぽいし。上野介はやるべきことやってただけなのに。杉浦日向子師匠の吉良家視点物語を読んだ時も目から鱗、ごめん上野介、私情弱だった!と思ったけど、富子に出会ってもっと強く思うようになった。「富子すきすき」はそんな二人の秘密のそしてとっておきの言葉なんだよね。夫婦だけの睦言。もうそっとしておいてあげよ。富子と上野介を。
2016/10/24
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