戦国鬼譚 惨 (講談社文庫 い 124-3)
戦国鬼譚 惨 (講談社文庫 い 124-3) / 感想・レビュー
岡本
信玄没後の武田家をテーマにした短編集。滅亡に向かう武田家を描くだけあってバッドエンドの勢揃い。英雄譚にある連戦連勝出世物語や、戦国転生モノに定番の知識チート繁栄モノとは全く違う戦国時代の生々しいリアル。彼らが一致団結し、勝頼の失策が無い武田家を見てみたいばかり。著者の「武田家滅亡」「天地雷動」と併せて読みたい一冊。
2019/06/06
とん大西
行くも地獄、退くも地獄…。崩れゆく名門武田家。悲劇の主人公は棟梁・武田勝頼だけではない。国境を守る土豪・国人衆の分岐点。お家の為か領民の為か、いや、親愛なる者の為か。裏切るつもりが逆に裏切られ、信じていたのに裏切られ。憎悪、情愛、思慕、あさましさ…それぞれがそれぞれの事情をかかえ、悩み、断を下す5編の戦国譚。一話重ねるごとに重く沁み入ってくる人間の業に読み応え大。とりわけ『木曽谷の証人』は地方豪族の悲哀が切なすぎて…。
2020/02/24
あも
まさに人間世界の悲惨!目を背けたくなる程の剥き出しの惨を突きつける名短編集。滅びに向う武田家と織田家の狭間で揺れる小勢力や武田家臣の苦悩を活写する。家族も領民も全てを守りたい。されど、それが許されない時代、叶わない立場。1話目の武田勝頼に老母と幼い子供達を人質にとられ、裏切り=処刑と知りながら、領土と領民を守るためには織田に寝返らねばならない木曽兄弟の板挟みの苦悩に胸が苦しくなった。謀略と猜疑に塗れ、嘲りの中に斃れるもののふ達。そんな中だからこそ、仁科信盛が見せた愛する者への"信"の華が殊更艶やかに咲く。
2019/02/07
藤枝梅安
「鬼」と「惨」、非常に重く暗いタイトル。高天神城を失い、長篠で敗れた武田家の滅亡への転落の過程を、武田領と織田領の辺境の武士団のそれぞれの事情と苦悩を織り交ぜて綴った5編。南信州の武士団の苦悩については、岩井三四二さんの作品でも読み、イメージをつかんでいたため、この小説もすんなり入ってきた。「義を貫く」か「保身」か。領民のために武家の「義」を捨てることの難しさ。保身を「領民のため」と誤魔化す武家の姿。組織が瓦解するときはこういうものなのだろうという、現代社会にも通じる「鬼譚」である。
2013/07/04
巨峰
武田家の滅びという史実の中で、5人(とその周りの人たち)の運命の変転を描いた5話!この武田信虎は、存在感があった!
2024/08/11
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