天の方舟(下) (講談社文庫 は 81-4)
天の方舟(下) (講談社文庫 は 81-4) / 感想・レビュー
Tetchy
最後に罰が下るとはいえ、彼らの蜜月は実に長く、その対価にしては釣り合いが取れないのではないかとこの手の物語を読んでいつも思う。確かに彼らの今後にはきつい道のりが待ち受けているだろうが、それでも彼らは誰もが羨む生活を送れたのだ。実は得するのは悪の側なのではないか。真面目にやっている人間ほど馬鹿を見るのがこの世の中の構図ではないかと実に虚しさを感じてしまう。しかしこんな歪んだ社会の構図はいくら暴かれ、断罪されようとも新たな汚職の構図が描かれ、同様の巨額のリベートが動くシステムが気付かれていくことだろう。
2015/03/08
幹事検定1級
ベトナムでのODAによる建設中であった橋梁が手抜き工事により落橋してから、エンディングまでスリリングなストーリーでした。まさかの大ナマズ養殖事業や殺人事件など当初の経済小説から幅広い内容でした。他の作品も読んでみたくなる充実かつ完成度高い作品です
2018/04/24
RIN
上巻では服部さんらしい問題提起型小説?と思ったが、下巻では方向転換。こんなに薄いのに何故2分冊?と怪訝に思ったがそれも効果的に働いて違和感なく下巻へ。経済事犯だと何となくスマートで、一種、知的なイメージになるが、これも結局は悪党たちのノワール小説だと思う。ここに描かれているような背任横領リベートって仕事してれば恐らく誰でもできるがほとんどの人はやらない。そこがモラルだったり人としての品格だったりするわけで、この小説を読んでODAの仕組みがこんなものだと思わないでほしいと痛切に願う。
2014/10/20
Yunemo
好きな作家です。ただ本作品は良く解らないというのが実感。ダーティービジネスへののめり込み、金銭への強欲さ、前半の展開はそれである意味納得。ただ男との関係が気薄。もっともっと悪人面した「七波」にして欲しかったな。全体的に中途半端感を感じてしまう。何故、クライマックスをああいう展開にするの? 善人でもなく、悪人でもなく、それでいて安全策は取る、残すものは残す。そういう意味では、ちゃんと人間のエゴさを最後に提示してくれている。やはりこれでいいんだろうね!
2012/11/19
たかちー
賄賂を梃子に開発案件を受注し続け、厳しくなる法改正を睨みながら手仕舞…と思ったところで、建設中の橋が崩壊する悲劇が。崩壊事故は実際にもあった話だったと今更ながらに知る。命の値段違うと言う訳でもないと思うけど、あまり大きなニュースとしては取り上げられなかった気がするな(自分が不勉強なだけか)。終盤、崩壊事故について七波は罪を償いながらも、自分はギリギリのところで安全なポジションを確保しようとするところは、まさに肉を切らせて骨を断つ感じ。心の内は分かり辛さもあったけど…。ラストシーンは某ドラマを思い出す。
2013/05/27
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