黄金の街 (下) (講談社文庫 ふ 78-2)
黄金の街 (下) (講談社文庫 ふ 78-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
最後まで誰が主人公なのかが判然としないままだった。やはり、この地そのものこそが、この物語の主役なのだろうか。カフェ・バークマンのエリックも、刑事のニックも、被害者の父のビリーも、少年トリスタンのいずれもが本来は無関係に存在するはずであった。その彼らを結びつけたのがロウアー・イーストサイドということか。彼らの家族は一様に崩壊している。その意味では、これは大都会における孤独者たちの物語なのだろう。そして、悲しむべきことに、彼らは同時に目的もまた喪失しているということだ。現代文明はこんなところまで来てしまった。
2017/02/04
遥かなる想い
下巻に入り、エリック、少年トリスタン、刑事マッティの人生が 浮かびあがってくる。 人種のるつぼ ニューヨークの風景を 描いてはくれるが、なぜか 物語に 入り込みにくい…著者は 映画の脚本も多く 手掛けているらしいが、映画にすれば、また違った街が見えてくるかもしれない…そんな印象だった。
2019/10/04
ケイ
2年前の夏の一週間、ひたすら散策したNYを思い出しても、この舞台は出てこない。ガイドブックを見ても、ここはほとんど素通りされてた。携帯の話が出てきていたって、ここは20世紀後半かと思うような街。団地があり、殺人があり、親はおらず、麻薬が蔓延る。でも、警官たちはどこか陽気で、ふと口にする台詞が気が利いている。書かれたのは2008年なのに、9.11の事は触れず、NYのローワーイーストサイドはずっとこういう所だったみたい。正体がよくわからないハリースティールがひたすらクールであたたかな男だった。おすすめ。
2018/10/14
NAO
黄金の街に憧れてやってきたのに、夢をかなえるすべもなく、ただ焦り、じりじりとした思いで暮らしている人々。彼らは、何らかの方法で自分の存在意義を主張しようとする。アトランティックシティに飛ばされたエリックが、会話の中で、「どこから来た難民? ニューヨーク?」と皮肉を飛ばすのが、なんとも印象的だった。それは、もはやニューヨークは黄金の街ではないということ。そこには、もはや夢などない。でも、逃げ場のない者たちは、その場にとどまって生きていくしかない。その場で生きていけば、なんとかなるものなのだと信じて。
2017/12/17
ちえ
下巻に入ってから様々な場面に話が飛ぶ。家族と別れて暮らす市刑事、被害者と一緒にいたカフェのマネージャー、息子を殺され自分を失いながら犯人を探し回る父親、心ならずも銃を打ってしまった少年、書き込まれたどの人物が主人公なのか悩む。いやアメリカに来た移民が最初に住むというロウアー・イースト・サイドを描きたかったのか。アメリカの複雑さやそれによる厚さをもどこか感じた。出版は2003年、舞台はツインタワービルが無くなってから1年足らずの時期のようだ。トランプやビンラディンの名前が出てきた。◆ガーディアン1000◆
2023/12/08
感想・レビューをもっと見る