ピストルズ 上 (講談社文庫 あ 86-8)
ピストルズ 上 (講談社文庫 あ 86-8) / 感想・レビュー
yoshida
「神町トリロジー」第二部。前作「シンセミア」からホシカゲ達も登場。東根市神町。町の人々と殆ど関わりがない菖蒲家。魔術師一家と呼ばれる彼等と接点を持った書店主の石川。菖蒲家の次女あおばから語られる一族の秘術。それは当主が相伝する人心掌握術。ヒーリングセラピーも経営する菖蒲家。そこで用いるアロマは裏を返せばドラッグにもなる。あおばの父の代から菖蒲家はコミューンを形成。語られるクロニクル。初めに石川が感じた芳香の中の死と汚濁、退廃のイメージ。上巻がやや平和であり下巻でのカタルシスがあろう。昨夏の事件とは何か。
2024/01/02
マリリン
次女があやめが語る、第2章「夢の花園より」第3章「局部麻酔」が面白い。ふたりのトシコさん・ふたりのショウコさんや菖蒲家の歴史と生業。この家にとって重大な出来事が起こった日5/3は何かを意味するのか。他にも聞き覚えのある日が登場するが、著者の気まぐれな発想なのか何かを含んでいるのか。既読の「シンセミア」ほど強いインパクトはないものの、第1章はドッと疲労し読んだが、それ以降はなかなか興味深い。祖父の亡魂は父へ…血はここで途絶えるのか。17巻まで読んだ「ジョジョリオン」を思い出した。思った以上に面白い。
2019/11/28
Y2K☮
四姉妹の誕生日が憲法記念日、春季皇霊祭(春分の日)、成人の日、秋季皇霊祭 (秋分の日)と重なるのは偶然ではない。一子相伝とされる魔術で人々の心を操る菖蒲家。戦後に定められた、もしくは名称が変えられたこれらの祝日との関連に著者はどんなメッセージを込めたのか。米軍の不発弾で車椅子生活になった戦災孤児のホシカゲさん、トランスジェンダーで名前という概念を軽んじるシュガーさんも意味深。忌まわしい伝承を憎みつつ、結局は祖父の呪いに逆らえない四姉妹の父も何かのメタファー。各時代とのリンクも含めて21世紀の大江健三郎か。
2015/02/07
ちぇけら
阿部和重特有の饒舌な語口が、『ミステリアス・セッティング』を経ることで柔らかくなり、『シンセミア』から6年後の神町の魔術師一家である菖蒲家について語られていく。6年前の事件で心傷を負った本屋と菖蒲家がどうかかわり、物語が進んでいくのだろうか。阿部和重らしくない読みやすい文体に違和感しかないけどね。下巻へ。
2018/07/07
豆乳くま
作者初読み。最初に登場人物一覧があり複雑な人間関係なのだと思ったが、そうではなかった。菖蒲家は1200年に渡る一子相伝の人心を操る秘術を受け継ぐ家系らしいがそれも口伝で定かではない。真実と想像が入り乱れる菖蒲家次女あおばの一人語りが200ページ位続きそれでも上巻では何も解らない。辛い。あおばの語りはいつまで続くのか。一子相伝の秘術の最終継承者みずきは登場するのか。何処へ向かうのか。楽しみなような苦行のような。
2013/07/23
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