新参者 (講談社文庫 ひ 17-30)
新参者 (講談社文庫 ひ 17-30) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
加賀恭一郎シリーズ第8弾。加賀の日本橋署への転勤にともなって、この地域界隈を舞台に物語が展開する。核となるのは小伝馬町で起こった殺人事件。その事件を巡って8つの章で様々な人たちの悲喜劇が繰り広げられる。すべては事件の周縁のいわば些細な事柄である。本書の眼目は推理やトリックにはなく、むしろ水天宮、人形町といった江戸情緒の残るこの界隈そのものを描くことにあった。もちろん、加賀あってのことなのだが。そして、最後の章で全てが明らかになり、物語は見事に円環を結ぶ。エンディングがまた絶妙。東野のうまさが際立つ1篇。
2021/02/20
Tetchy
各章で明かされる各家庭が抱える秘密や問題は我々市井の人間にとって非常に身近で個人的な問題だ。通常は当事者しか解らないがひょんなことで表出した時に謎へと変わる。そんな謎を加賀は細やかな観察眼と明晰な推理力で解き明かす。このどれもが人間の心の不可解さを表している。しかし全てが明かされると、この世界は人間の優しさや人情で出来ているのだと温かい気持ちになるから不思議だ。本書は家族への愛を色んな形と角度から描いたミステリだ。人の心こそミステリだと宣言した東野氏がこんなにも心地よい物語を紡いだのは一つの到達点だろう。
2016/05/20
nobby
加賀シリーズは作者の様々な手法で描かれていて、面白い。今回はそれぞれ全く関わりないと思われる切り口から見事事件の解決へ。結局、加賀さん独りで解いちゃってるもの(笑)その真犯人なんかより、とにかく一つ一つの逸話に微笑ましさや泣き所があって楽しめた。最後、ある刑事の背景までも描いてるのがニクい。さて、ドラマ借りてこよう♪
2013/11/07
takaC
長々と積んでいましたが今日NRTからSINへ飛ぶSQ便内で読了。何年も前に連載や単行本を読んだ時は自分(や妻)は被害者より年下だったのに今回は年上で、事件の真相よりその事実がショッキングでした。(笑)
2016/06/19
ミカママ
既読のつもりでいたら、おそらくドラマ(映画?)を観てただけ、だってことに気付いた。それくらい原作に忠実、と言うか、阿部ちゃんのイメージ強すぎ。(笑) 形式としては、私の大好物、連作短編。日本橋の義理や人情の世界を織り交ぜながら、殺人事件は次第に解決へと向かいます。ミステリーであると共に、下町の人間ドラマでもありました。
2014/11/29
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