雪猫 (講談社文庫 お 114-3)
雪猫 (講談社文庫 お 114-3) / 感想・レビュー
mae.dat
夏目漱石『我輩は猫である』を端にする、由緒正しき猫一人称視点小説。但しファンタジー要素含む。個人的にはねこ視線語り以外のファンタジー要素は無ければそれに越した事はないと思いましたけど。仔猫の時分に助けてくれた理々子さんを女神と敬うタマオの物語でね。人がねこを敬愛する描写はままありますが、逆は珍しい感じですね。でもその佇まいはきちんとねこねこしていて好い感じです。ねこ仲間の黒ねこちゃんイヴも、別の形で飼い主を慕っていて、相乗効果を発揮していて好いですね。楠さんも泰然としていてナイス。
2023/03/18
しいたけ
その昔、つうは救ってくれた与ひょうのため、命を削って機を織った。タマオは、真っ黒なゴミ袋から救ってくれた少女を、命を削って守ろうとした。健気で小さな恋が、真っ白な雪に溶けていく。想いが通じたかとか、報われたかとか、幸せだったかとか、そんなことはどうでもいい。ただ、恋だった。つうもタマオも、命を懸けてお返しすること。それが真っ白な恋だった。「この世界をくれた女神を、命が尽きるまで愛そう」「生きてる間は一緒にいられて幸せだっただろ?振り返ってみろ。あんたは幸せものなんだ」
2017/02/21
ひろ
大山さんの著書は『イーヨくんの結婚生活』が初読みだった。優しい物語に胸が熱くなって涙がポロポロこぼれた。そして次に手に取ったのが『猫弁』。頭脳明晰でピュアな主人公・百瀬太郎に惚れた。まさに私の理想の男性だった。そして本書は、2012年に出版された大山さん三作目の著書だ。「ぼくはタマオ。真っ白な猫だ。生まれたばかりのぼくの命を救ってくれた理々子に恋をしている」珈琲を飲みながら、一気に読んだ。クライマックスは息を止めて読み、ラストシーンで涙がポロポロこぼれた。猫弁の作者だからこそ書けるファンタジーだと思う。
2018/01/24
冴子
全編猫目線で語られるファンタジー。猫好きの大山さんらしい優しい猫と、彼を可愛がる少女の愛の物語。白猫のタマオは飼い主の理々子の危機になると人間に変わる。それはタマオの愛が生み出した夢の世界なのかなぁ。同じように飼い主を愛する黒猫のイヴとの交流も心に沁みる。うちの猫たちも何を考えてるのかなぁ。
2016/09/02
はる
切なくも温かい。人間の少女に恋をした猫のタマオの物語。こういう設定だとやたら甘すぎて薄っぺらい展開になりがち。でもこの作品は違った。様々な要素が盛り込まれていて物語に厚みがある。特に猫特有の習性や、人間に対するシニカルな視線、軽妙なやりとりが面白くてどんどん引き込まれます。全体を通して描かれるのはやはり人間と猫とは違う、という悲しみ。だからラストは…ああ、何て切ない…。おぬいばあさんが個人的に凄く好き。
2019/04/12
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