天魔ゆく空(下) (講談社文庫 し 42-22)
天魔ゆく空(下) (講談社文庫 し 42-22) / 感想・レビュー
TheWho
下巻に入り、細川政元は、対立した足利義材(義稙)を室町将軍から追い落とし足利義澄を擁立する世にいう明応の政変を引き起こす。そして、敵方の赤松政則に姉の洞松院を娶らせ味方にしながら勢力を拡大し、更に敵対する寺社勢力の弱体化を図り比叡山延暦寺を焼き討ちを行い疲弊させ実質的な室町幕府一の権力者に上り詰める。しかし孤高の知者でありながら突拍子もない行動と継嗣争いの中で、暗殺される。信長登の70年前に戦国時代に突入させた余り知られていない希代の梟雄を描いた秀作です。
2021/09/26
ざれこ
知らない歴史で興味はあったものの、なんか自分と相性悪かったのか読むのに時間かかりました。政元自身の語りがなかったことで彼が何を考えてるかわからず、それがぞくぞくする面白さも生んでましたが、歯がゆくもありました。最後はもっと隠された真意が見えるかなと思ったもののあっさりでしたが、死んでのちにわかった事実には胸をつかれました。そしてやはり私が女だからか、姉の数奇な人生に感情移入して読みました。それにしても時代がカオスすぎ、秩序を生むというのは難しいものですね。で、解説はちょっと言い過ぎやと思う。
2016/04/28
onasu
下巻は義材の将軍継承から明応の政変、代わって将軍位に就いた義澄との不和、生き残った義材、畠山氏の蠢動と養子を迎えたが跡継ぎを定めない政元に波立つ周囲とその結末。異母姉の洞勝院は、還俗して赤松家に嫁いだが程なく夫に先立たれ、ひとり娘を守るために女大名とも。 下巻も洞勝院を始めとした周りの者が細川政元を描いていくが、上巻に比べると政元をというより彼らのことに紙幅が割かれているとも。それも政元の意図が分からないので致し方ないか? 下巻は読むペースが落ちたが、歴史知識の空白期を埋められたのは産物でした。
2023/04/04
yamakujira
戦国時代の幕開けとも評される明応の政変を主導した政元は、半将軍と呼ばれるほどの管領として権力をふるう。でも、その専横の裏には政元の深謀遠慮があった。なじみ薄い時代、錯綜する人間関係をうまく整理して、我欲にまみれた男たちをえがく。叡山焼き討ちとか傀儡将軍とかは信長を、生涯不犯は謙信を彷彿とさせる政元は、俗人にとってはまさに天魔だったのだろう。諦観したような政元の最後が哀しいね。政元亡き後、香西元長も薬師寺長忠も細川澄之も三好之長も斃れ、足利義澄も義材も細川澄元も失意に死んでゆくんだよねぇ。 (★★★☆☆)
2016/04/23
qwer0987
読んでいると、この時代の歴史小説が少ない理由がよくわかる。人名は似通っているし、身内同士で争うため利害関係はぐちゃぐちゃでわかりにくいのだ。その中で著者は内容をうまく整理しておりさすがと感心する。政元の権謀術数は下巻も際立っている。将軍や日野富子を翻弄し権力を万全にする様は空恐ろしいほど。しかしそれ故周囲は不安で敵も増えることとなる。彼の最期は必然的なものだったが、血の呪縛から解放されてたのは救いであった。姉の洞松も才知に長けており良いキャラである。この時代の雰囲気も味わえる佳品であった。
2022/01/04
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