ラバー・ソウル (講談社文庫 い 72-11)
ラバー・ソウル (講談社文庫 い 72-11) / 感想・レビュー
nobby
これはまた見事にやられた傑作だ。井上作品だから何かあると勘ぐるも、SIDE ABやらタイトルからの“ソウル”にしか行き着かない自分は何と浅はかなことか(笑)醜い容姿を持つ男の変質的な行動に嫌悪感だけを積み重ねながらも読み進める600頁強。それが最終章に入って、それも途中から様変わりを目にして身を乗り出してしまう。その大仕掛けに感嘆すると同時に何ともせつなく憤り、一方で至福なんだと言い聞かせる。読後しばし余韻に浸り気付けば目には涙。
2016/03/03
どんぐり
容姿にハンディキャップを背負い、"今自分が住んでいる世界に比べたら、たぶん地獄は素晴らしいところに違いない"と小学五年の時に悟るほど、壮絶な現実を過ごしてきた主人公。そんな彼がある一人の女性と出会い、恋に落ちる。自分の中の小さな小さな価値を見出した時、生まれてはじめて生命を実感する。切ない。やるせない。これは一人の男性が、愛した女性を守る自己犠牲の物語。読了後、「醜い外見の人間は、きっと心も醜いのだ、と誰もが思うだろう」という主人公の言葉を思い出し、グサリときた。先入観や偏見について考えさせられた。
2020/12/05
しんたろー
井上夢人さん初読み。哀しい男・誠の手記を中心に、関係者への聞き込みを織り込んで、連続殺人を描いた構成は678ページを難なく読ませる筆力で圧倒された。ストーカー行為に強い嫌悪感があるので読み始めは「キツイなぁ」と思ったが、誠の切ない設定に共感している自分に驚いた。フェアに伏線を張っているので、終盤に違和を感じる箇所(携帯電話や会話の一部分)でオチの想像はついたが「不器用な純愛」物語として楽しめた。少々くどく重複する記述を減らせばページ数を縮められて、本の厚さに怯んだ人が読み易くなるのに惜しい…と思える良作。
2018/08/20
hit4papa
本書は、ビートルズのアルバム『Rubber Soul』をモチーフとしたミステリです。ソシオパスものとしても面白くはありますが、それだけでは傑作とはいきません。秀逸なのはウルトラ級のどんでん返し。ラストに近くなって、実に悲しいものがたりに変わっていきます。中盤までとの落差が大きいだけに、強烈な衝撃を感じるでしょう。あざとくもありながら、ホロリとさせてくれるのです。全16曲を奏でて『Rubber Soul』の意味が、ようやく明らかになります。実に心に染み入る作品です。自分が見落としている仕掛けもありそう。
2019/10/14
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
女性モデルがふとしたきっかけからストーカー被害に遭ってしまい、被害者、加害者、周囲の人たちの視点それぞれから取調べの調書を繋ぐような形で物語が展開していく。ビートルズのアルバムの順番で構成される等ビートルズ好きにはたまらない構成のようですが、如何せんそんなに詳しくない私には少し冗長な印象。特にストーカー視点がおそろしく不快で、600p近くまでは結構苦しかったです。でも圧倒的なラスト。投げ出さず読みきってよかった。何書いてもネタバレになりそうなのでこれ以上内容に触れる勇気ないです(´˘`๑)
2019/12/07
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