星火瞬く (講談社文庫 は 99-3)
星火瞬く (講談社文庫 は 99-3) / 感想・レビュー
harass
アナキズム入門よりこの本を知る。アナキストバクーニンは逃亡のさいに、日本を経由したのは史実であるが、彼と幕末志士とからませたフィクション。シーボルト事件で追放されたシーボルトとその息子は29年ぶりに日本を訪れる。主に息子からの視点で語られていく。ロシア、イギリス、フランスの思惑と幕府側の駆け引きと、幕末志士たち。正直、こじんまりした印象。ホラ話と歴史モノのバランスを考えてしまう。まあ楽しめたほうだったが。この作家は初読みのせいもあるが、おそらく主要作品と作風が異なるのだろうと思われる。
2017/10/04
優希
シーボルトの息子目線で描いた幕末の物語。そのせいか、やたら外国人が目につきました。新しい視点で日本の歴史を捉えようとした実験作と言ってもいいでしょう。登場人物に若干魅力が欠けているのが残念なところですが。
2022/08/26
エンリケ
シーボルトの息子の視点で描かれた幕末の物語。外国人を中心に据えたお話が斬新だった。歴史を彩る有名人達も登場するのも嬉しい。物語はロシアの革命家を中心に展開する。考えてみれば明治維新も一種の革命。彼の暗躍がどれ程それに寄与したかわからないが、目指すものが民の幸福というのなら少々方向性を異とする。維新の原動力となったのはおそらく諸外国からの侵略に対する恐怖感。多分に野心も持ちながら登場人物達は方向を違えながら奔走する。その中心に居るロシアの怪人物が一番ピュアだったとは皮肉。作者練達のストーリー展開を満喫した。
2018/08/22
ミスターテリ―(飛雲)
シーボルトが29年ぶりに息子と来日。13歳の少年はこの地で初めて世界を知り大人になる。ー日本に亡命中のバクーニンは言い放つ「君にひとつの秘密を教えてやろう。世界はつながっているのだ。東洋の小さな国で開けた鍵が地球をひとまわりして、ロシアの扉を開けて新たな流れを呼びこむー世界は犠牲なくして前に進めないのだ。」倒幕を企てるもの、異人を殺そうとつけ狙うもの、新しい時代を切り開こうとするもの・・多くの犠牲の中、変革を遂げていく日本の姿を、外国人の視点から描く。ひさしぶりにダイナミックな歴史の流れを堪能した。
2023/06/25
だまし売りNo
小栗上野介、勝海舟、高杉晋作らが登場する。勝海舟は出世欲の塊の卑しい人物に描かれる。無政府主義者のバクーニンも登場し、幕末の日本人の思想に影響を与える点は面白い。だまされた人々や虐げられた人々が火炎瓶を投げることで憤りを表明する(220頁)。革命の原動力を感じた。 本書のバクーニンは自信満々な人物に映るが、終盤では政治犯としてロシアの監獄に収容された際の悲惨な境遇が描かれる。国家権力の弾圧は肉体と精神を蝕む。
2023/06/10
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