地の底のヤマ(上) (講談社文庫 に 28-12)
地の底のヤマ(上) (講談社文庫 に 28-12) / 感想・レビュー
goro@80.7
これは近現代歴史大河警察小説と言えばいいのか。炭鉱の町から始まる物語は上巻700頁のブ厚さでまず圧倒された。炭鉱の歴史、強制連行、悲惨な大災害、労働争議、差別に哀しいい事件。少年時代に犯した罪に苛まれながらも父と同じ警官になった鉄男。それぞれが大人になった時、またこの炭鉱の町から新たな展開が、どうなる鉄男と痛くなる想いで下巻へ突入します。
2021/04/19
hrmt
初、西村作品。主人公鉄男の、炭塵爆発に纏わるらしき過去のトラウマをチラつかせながら、三池炭鉱の盛衰を下地に、そこに生きた人たちの生活と心情を重層的に描き読み応え十分。旧労組と新労組の対立、与論移住者や朝鮮からの強制連行者への差別などの忌まわしい歴史を踏まえつつ、組織に属する男たちの悲哀が浮き彫りにされていく。活気ある炭鉱町での少年達の日々が活力ある昭和の空気を伝え、その少年達が大人になり炭鉱も廃れていく時、時代が遺した汚泥、自分達が犯した罪にとらわれる鉄男の苦渋が痛ましい。この後鉄男は一体どうなるのか⁈
2016/11/05
うめ
言葉ってメロディだ。祖父母世代(ギリギリ親世代)が使っていたコテコテの方言が私の耳には心地良く(が、この辺りの言葉を知らない人・知らない世代には読むのが苦行ではないのかしら)、郷愁を誘った。内容も骨太で読み応えがある。どっしりと人生に向き合いたいときに読むと何かが見えるのかも(ただしどちらかというと男性向け。今の時代には合わない考え方も多い)。剣を正しく振るうには己の中に罪が無ければならないのだろう。原罪を抱え、葛藤し続けること無しに、時に人を傷つける”正しさ”を人に掲げることなど出来ないのだ。
2018/09/09
さんつきくん
長い。700p超えの大作だが、まだ上巻を読み終えたばかり。第一部は斜陽化しつつもまだまだ、炭鉱労働者がいた1974年福岡県大牟田市が舞台。炭鉱の労働争議がまだ蔓延っていて、労働者も旧労と新労の二組が街を分担していた。その中で旧労の幹部が変死したことで、街が異様な雰囲気に包まれていく。主人公の猿渡は警察官。父もまた市民に慕われた警官だった。第二部は1981年の大牟田市が舞台。炭鉱は錆びれ、暴力団の抗争が街を蔓延していた。主人公は派出所勤務から県警へと出世。不明な金の流れ「R資金」を追いかけることに。
2018/12/31
さとみん
懐かしい地名、懐かしい言葉、 だけど知らない時代の話は身内の昔話を聞いているようだった。炭塵爆発の日に起きた事件、鉄男が抱えている黒雲には続きの話があるらしい。色々と思うことはあるが、まずは下巻を読もう。
2016/11/13
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