日御子(下) (講談社文庫 は 47-6)
日御子(下) (講談社文庫 は 47-6) / 感想・レビュー
ミカママ
さすが『三たびの海峡』を書いた作家さん。少ない資料からここまでのドラマを紡ぎ出した筆力・構成力はすごい。欲を言えば、あまりにスパンが長すぎて、登場人物ひとりひとりのキャラが薄まってしまったこと。もう少し例えば女性キャラ、そして使譯(通訳)としての仕事内容にフォーカスしてくれた方が読みやすかったかな。現在の日本と近隣国との関係に思いを巡らせながら、読了しました。
2016/09/04
mocha
〈あずみ〉一族9代、200年に及ぶ物語。少ない資料でよくここまで壮大な話が書けたものだ。衣食住の描写も細やかで、良質なファンタジーのようにも感じた。歴史に明るくない私でも「卑」「邪」「奴」などの悪字が多いことに疑問を持っていたのだが、帚木さんの解釈に得心した。通訳の人々を描くことで、言葉・文字の重要性も訴えたかったのだろう。日御子の人物像もとても魅力的だった。
2016/03/25
のぶ
下巻に入り耶摩大国が台頭し、やがて女王、日御子が誕生する。針のひ孫の炎女は、弥摩大国の巫女となり、日御子に漢字や中国の歴史を教える。下巻では時代の流れが非常に速く、程なくして日御子も80年の生涯を閉じる。この作品はタイトルにある日御子を中心とした物語ではなく、むしろ国内の小国や、朝鮮半島との国々との交流と紛争の話で、邪馬台国の物語だと思って読むと肩透かしを食うかも。しかしストーリーとしては面白く、史実が謎に包まれたこの時代を、帚木さんは良く整理して、しっかりとした作品に仕上げていた。
2018/12/01
niisun
帚木作品は『水神』『天に星 地に花』など土地に根差した市井の人を描いた作品を読んできましたが、こんな大河小説もまた良いですね。西暦50年頃から250年頃の約200年の物語。その中心は、倭と漢の通訳を務める代々の使繹たち。倭の各国で使繹を務めるあずみの一族は、使繹の役割や漢の見聞に加え、生き抜くための3つの掟を代々語り継ぐ。漢や魏を訪れた代々の使繹たちが、多用される鉄や見たこともない馬車や紙に驚く姿は、まるで明治の遣欧視察の様。この国は、圧倒的に進んだ手本にすべき国がないと進歩できないのかもしれないですね。
2018/09/24
さよちゃん
大好きな「三国志」の時代を、日本視点で書かれていて、ちょっとした感動を味わいました。語り口は常に淡々として、物語としてはあまり盛り上がりはなかったのですが、文字がなく、記録が残っていない時代の雰囲気を味わうことが出来ただけでも、読んで良かったと思います。
2020/09/05
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