命の意味 命のしるし (世の中への扉)
命の意味 命のしるし (世の中への扉) / 感想・レビュー
starbro
上橋菜穂子は、新作中心に読んでいる作家です。著者の作品では「獣の奏者」が一番好きですが、本書はリアル獣の奏者とも言える齊藤慶輔獣医師との対談集です。小冊子ですが、タイトルの命の意味や人間と野生動物の在り方、生態系等、色々と考えさせる内容です。猛禽オオワシは、鳥類が恐竜の末裔である事を納得させる生物で浪漫がありますね。本書で紹介されている世界各国の著者の翻訳本の表紙もバラエティに富んでいて興味深いです。次は新作のファンタジー大作を読みたいと思います。
2017/02/19
文庫フリーク@灯れ松明の火
『獣の奏者外伝-刹那』でエリンの師・エサルが獣ノ医術師を目指した若き日描く「秘め事」に、ムチカ(小型の鹿)が口を開け、その舌と口の中が真っ黄色-黄疸が出ている場面がある。当初、上橋さんは鹿の白目に黄疸が出ている描写にする予定だったが、釧路「猛禽類医学研究所」で野生の猛々しい野生動物を診る現役医師・斎藤慶輔氏の検証・アドバイスで変更したという。SWITCHインタビュー達人達 上橋菜穂子×斎藤慶輔の書籍化。上橋さんが【リアル獣の奏者】と呼ぶ斎藤医師の、重厚なフィールドワークから命を救われ、野生へ戻って行く→続
2017/06/09
へくとぱすかる
ページ数は少ないものの、非常に重大なテーマ。獣医師として北海道で猛禽類など野鳥の治療にあたる齊藤さんと作家・文化人類学者の上橋さんが、命を語る。野鳥が交通事故にあったりしても、治療は簡単ではない。それこそ鳥の心を推し量りながら麻酔をかける。鉛の散弾を誤って食べ、中毒死する鳥の話を読むと、人間のいいかげんさに、ため息が出る。日本で鉛散弾が禁止されるまで、長くかかったことなど、日本の自然保護には危機感を感じる。シマフクロウの個体数の少なさにも驚く。自然を守れないなら、人間であることが恥かしくなる。
2020/06/24
よこたん
“ピッチャーがいい球を投げたときって、キャッチャーミットがパーンといい音がしますね。物語が死んでいると、あの音が鳴らないんです。” 確かに、鳥肌が立つような気持ちよさには、音も伴っているのかも。作家・上橋さんと野生動物の獣医師・齊藤さんの対談を織りまぜながら。“野にあるものは、野に。”は、お二方の共通の思いのようだ。『獣の奏者』や『精霊の守り人』の生まれたエピソードも知ることができて嬉しかった。野生動物の治療から、世界的規模の自然環境への問題提起まで、齊藤さんの話ももっと聞きたいと思った。
2018/12/29
けんとまん1007
命に携わる齊藤さん、命を描く上橋さん。ここに至るまでの道のりを知ることができ、ますます、お二人の向う先が素晴らしいと思った。それがあるべきところへ戻すこと、あるべきところに立ち位置を置く。今の時代、なかなかできることではないと思う。日々の積み重ねというと、ありきたりになってしまうが、先を見据えての日々の積み重ねの意味が、深く伝わってくる。今できること、自分ごととして考えること。ここから、すべてが始まる。
2017/11/11
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