大震災後の社会学 (講談社現代新書 2136)
大震災後の社会学 (講談社現代新書 2136) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書は2011年3月11日に起こった東日本大震災とその後の問題を、社会学の立場から検証し、今後に向けて問題提起したもの。筆者たちは震災からの「復旧」を否定する。なぜなら、本来的に「日本型システム」に問題があったからであり、そのことはそもそも東京電力の原発が福島に設置されたことからも明らかである。こうした問題点を根本から、またボランティアの問題などを含めて、多面的に捉えた本書の意義は大きい。
2012/02/14
きいち
関東大震災との比較だけじゃなく、新井白石が対応した宝永の地震や幕末につながった安政の地震を加えてくれたおかげで、ずいぶんと視野が広がる。最も根っこにある課題が「合意形成のしくみが欠けていること」だ、そしてそれは震災前から継続している問題だ、という指摘にはとても納得感がある。やるべきことは、すぐに成果のでそうな何かに飛びつくことじゃない。複数の視点を使いながら全力で妥協点を探すコミュニケーションを行うこと。考えたら、勝も西郷も大久保もやってたことはそれだ。構想力よりも、妥協への強い意志。
2012/02/02
苦虫
新先生目当て。新進気鋭の若手社会学者達による誠実な震災後の社会学。震災における文脈作りへの挑戦はすごいなぁと思う一方、読み進める程社会学の無力さを痛感する。グローバル化するリスク社会、日本の社会と災害時のシステム、メディアのあり方、ボランティアの成熟など。日本型システム(企業が労働者の社会保障を担う事)は経済団体によって進められた。反国家主義によるボランティアらの過度な期待の警鐘。震災後アンケで、「合理的な社会」は重要ではなく、被災地では「豊かな経済」非被災地では「十分な社会保障がある」社会が望まれた!
2015/01/11
マロソ
大学院講義にて課題作文のため数々集めた中の一冊。こんな観点があったのかなど分野も幅広く、得るものが多かった。災害に対する予測や技術などの理系に委ねる研究分野の方がどちらかと目に行きがちだけれど、震災を経てどのような課題が浮き彫りにされ、それを糧にどのような未来展望をするべきなのか、文系に課されるものは大きい。読んでいると大震災にて確かに大きな転換点に迫られている一方、現実的にはそれに対応できていない現状やむしろ逆行も感じてしまう。いかに従来に囚われたやり方や考えから外に出ることが出来るかに尽きるのかなと。
2012/06/07
おとむさん
地震発生から丸3年が経つのを前に、改めて震災について振り返る。第1章において遠藤が、19世紀以降の震災についてまとめているが、これを見ると東日本大震災が、決してよく言われるような「"1000年に一度"の震災」とは言い切れないものだと思える。複数の社会学者が、社会体制や経済面、ボランティアなどの側面から震災に切り込んだ、示唆に富む一冊であった。
2014/02/28
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