愛と暴力の戦後とその後 (講談社現代新書 2246)
愛と暴力の戦後とその後 (講談社現代新書 2246) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書は『東京プリズン』を補完するものとして書かれた。主としては日本にとっての戦後とは何だったのかを単に教科書的につまり観念的にではなく、自己の実体験化させたところで捉え直そうとする試みである。その結果、いわば虚妄の戦後史を炙りだしていくことになった。さらに遡行するならば、明治維新さえも疑わしい。そして、「明治の日本は、近代国家では、なかったのではないか」という、日本にとっての近代の根源にまで迫るのである。憲法問題からオウムに至るまで縦横無尽に語るようでいて、根幹は一つである。きわめて示唆に富む思索だ。
2016/10/15
遥かなる想い
2015年新書大賞第4位。 今の世界が創られる最中に生きた著者が 「その最中」を語った本である。著者が 歴史の専門家でないのが気持ちよい。 素直な意見が素直に読者の心に入る。 天皇制、安保闘争、浅間山荘事件、 恋愛至上主義、オウム..やや発散しすぎる 構成が気になるが、時代を軽く振り返るには ちょうどよい本である。
2016/01/31
marco
『東京プリズン』の赤坂真理さんが、自身の肌感覚で記した戦後論。肌感覚だから打算がない。東京の五輪招致に冷水を浴びせるなど、読んでいで小気味いい。政治家にもマスコミにも期待できないいま、勇気ある作家こそが希望に思えてくる。
2014/12/29
Tui
著者の「東京プリズン」を読んだ時、ただ事ではないと鳥肌が立った。その解説書ともいえる本著。日本の戦後史の検証を、事実を時系列に並べるのでなく、違和感から感覚的に進めている。その根底にあるのは、戦後日本人が選んできた道筋への戸惑いだ。よくぞ言ってくれた!と唸ったのは、お笑い芸人を同質集団内部の調停者であると述べているところ。『ひな壇芸人が会するバラエティを見ているとよく、閉鎖集団のいじめを見る気持ちになるのだ』と。ある年末特番で出川と狩野がイジられる場面を見たときの不気味さを思い出した。
2015/10/03
ネギっ子gen
ようやく、読メを始めて以来の念願だった、この著者名を“本棚”に刻すことができた。その第1作目は、高橋源一郎氏が、<いまの時代にこそ相応しい、戦後社会と民主主義について深く検討する本>と絶賛した、この書から――。なぜ、私たちはこんなに歴史と切れているのか? あの敗戦、新憲法、安保闘争、バブル、オウム事件、そして3・11……。“知っているつもり”をやめ、虚心に問い詰めることで、新たな発見が。『東京プリズン』の作家が、自らの実体験と戦後日本史を接続させ、この国の“語りえないもの”がターゲットの、驚きの日本論。⇒
2021/06/15
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