ニッポンの奇祭 (講談社現代新書 2441)
ニッポンの奇祭 (講談社現代新書 2441) / 感想・レビュー
HANA
この南北に長い国には、各地に様々な祈りの形がある。新書という形態から、そのような各地に残る変わった祭りを紹介する内容かと思っていたのだが。実際は著者の祭りを訪ねた随筆であった。著者の出身地のせいか長野が多め。あと奇祭というわりには語られているのも諏訪御柱祭や新野の雪祭、岩手の蘇民祭に相馬野馬追と比較的メジャーなものが多いように感じられたし。著者のウェットな文体は嫌いではないが、随筆という形態とその文体も相俟ってか祭りの全体像がいまいち掴みにくいようにも感じた。やはり随筆集として読むのが正しいように思う。
2018/05/14
きみたけ
著者はカメラマンの小林紀晴氏。出身地である諏訪の御柱祭を皮切りに、日本全国の16の珍しい祭りを取材したルポ。沖縄宮古島のパーントゥ、岩手の蘇民祭、福島相馬の野馬追、長野の念仏踊りなど、全国的に有名な祭りから小規模な祭りまで一風変わったものを独自の視点で伝えていています。山あいや離島など中央政権の支配が届かなかった地域ほど、その土地の古くから伝わる独特の風習が代々「奇祭」として受け継がれていることが多いそうです。祭りはその土地の人たちが神様を敬い行う行事で、よそ者は控えながら見学すべきとの考えに共感です。
2023/01/19
肉尊
山奥の集落など秘境に残る奇祭りは、ヤマト政権に征服される以前の土着の信仰が、太古から悠久の時を超えて現在まで引き継がれている。筆者は、外部の観客として祭りの一瞬をネガに刻み付けるが、演者である村人との隔たりを感じてやまない。大分のケベス祭では、当場たちが炎の塊たる藁を観客にむかって投げつけてくる。動画を見るかぎり、確かに度を越している。大火傷する人がいないことが不思議なくらい。古からの伝統の前では、既存の法制度や常識も無価値となる。演者は年に一度だけ起きる何者かに憑依され、時空を超えた聖域を生み出すのだ。
2022/12/05
ホークス
祭というものは一般化とか抽象化を拒む。メタ化やパロディ化も遠ざける、ドロドロした土着のパワーがある。これに賭けるしかないという祖先の強い願いが封じ込められている。その強さ故に偏見とか家柄とか性差などまで当時のまま焼き付けられており、存続を支えもし、消滅を早めもしている。本書は写真家が祭の現場に赴き、神々の姿を追ったドキュメンタリー。安寧を神に託した祖先の姿が、荒々しい所作や掛け声から蘇る。それを古臭いと言えるほど人間はまだ自由になっていない。祭を見つめる著者の真摯さがとても清々しく感じられた。
2019/07/20
メタボン
☆☆☆★ 諏訪出身のカメラマンが郷里の御柱祭りを皮切りに全国の祭りを訪ね撮り歩く紀行。文章がなかなか上手い。祭りの中で、古の時間を体感する。担い手がいなくて潰えてしまう祭りも多い。御柱祭りはもちろんだが、大分のケベス祭、岩手の蘇民祭にも行ってみたい。
2020/06/28
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